国家によるグローバル化から都市・地域でのグローバル化こそ日本経済復興のカギとなる

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しかもそこに16世紀の国際法学で有名なグロチウスの文章が引用されていて、これも興味深い。

〈神学者たちが教えるところでは、ある特定のものに帰属しているものを守るために戦争が遂行しうるように、自然の権利は、共通だと思っているものの利用を確保するために、正義にしたがって同じことを行うことができる。こうして通路を塞ぎ商品の輸送を阻止するものに対して、事実上、道を切り開くことができるのだ。〉(『海の自由についての論文』前掲書、414ページ)

アジアでは元来、国家よりも都市が栄え、その都市と都市は海の交通によって結びつき、そこには航海の自由が確保されていた。今アジアは再びそれを取り戻し、自由な海洋貿易を行おうとしているといえるのだ。

南沙諸島やマラッカ海峡の問題、ひいては台湾海峡などの問題を考える際、中国やアメリカの覇権主義という枠を超えた「アジアの弧の回帰」という形で考え直すことができるのかもしれない。

この海域に暮らすアジアの地域は、米中の覇権主義を超えた18世紀以前の自由貿易の復活を望んでいるのかもしれないからだ。それは米中の思惑をはるかに超えていて、これらの地域が新たな自由な交易の世界へと住むことの現れかもしれない。

2025年・世界の現住所

2025年の今年、21世紀もすでに4分の1が過ぎた。2025年の世界を20年前に予想した書物『2025年の世界』(Nicole Gnesotto, Le monde en 2025, 2006)という書物がある。この書物は、リーマンショック以前に書かれたものだ。まだ世界は、グローバリズムのまっただ中にあった。その序文にはそれを象徴する言葉が書かれている。

それは①グローバル化は避けられない、②世界には3つの軸がある(アメリカ、EUそしてアジア)、③EU内で対立がなければヨーロッパの時代が到来する。

しかし2008年のリーマンショックによって世界はいつのまにか国家帰りをし、グローバリズムは中断する。3つの軸のうちアジア、とりわけ中国の比重が高まり、2つの軸であるアメリカとヨーロッパが衰退した。今や西欧の衰退は確実なものとなりつつあるといっていいかもしれない。

その予測の中の人口、経済について見てみれば以下のようになる。

人口について見ると、2007年の世界の人口は64億人だが、2030年には79億人に達するであろうと予測されていたが、実際にはすでに2024年に81億人となっていた(しかも、アジアとアフリカで60億人もいる)。

繁栄するはずのEUは2007年4億5200万人から2025年には4億7000万人となる予定であったが、今現在4億4900万人に減っている。移民を多く受け入れ、さらに2013年にクロアチアが加盟したにもかかわらず、イギリスの脱退で大きく減少してしまった。

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