国家によるグローバル化から都市・地域でのグローバル化こそ日本経済復興のカギとなる

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さて、そうした変化の中で日本はどういう位置を取るべきかという問題が残る。戦後、冷戦の時代以降、大国間の対立の中で、自由な貿易圏は阻害されてきた。グローバル化という言葉が使われ始めた1990年代以降も日本は冷戦の後遺症に悩まされ、少なくとも外交政治は冷戦以前の体系を維持してきた。

もちろん経済界は、この流れに乗り積極的に海外への門を開いて進出していった。しかし、北朝鮮の問題や尖閣諸島の問題、台湾危機、南沙諸島の問題などが起こるたびに冷戦状況の悪夢に悩まされ、門戸を閉じるということを繰り返してきた。それが、皮肉にも日本経済の衰退を導き出したことも事実である。

日本の脱冷戦・アジア回帰がカギ

ヨーロッパで冷戦時からの軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)が時代の要請に応えられずに崩壊の危機にあるように、冷戦によってつくられた日米安保条約も時代の要請に応えられなくなっているともいえる。

日本経済の衰退が世界のグローバル化とともに始まったことを考えるとき、日本は冷戦のトラウマから目覚め、大きく門戸を空け、日本海、黄海、東シナ海をめぐる地域との関係を改善するしかないといえる。

とりわけ沖縄、九州、中国地方、四国などの経済再興は、日本経済立て直しのカギであろう。この地域は地理的に見て、また歴史的に見て、東アジアという環の中心に位置しているのであり、その繁栄なくして日本の復興、そしてアジアの復興などありえないといえる。

日本の復活は、アジア回帰と、アジアの海への回帰にかかっている。その意味でアジアの安定を守るための、軍事ではない、政治、外交の努力に期待したい。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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