ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる マイケル・ルイス著/東江一紀訳 ~国民性が顔を出す「国家破綻」の実相
極めてタイムリーな本である。まさにギリシャ救済問題が最終段階にあり、多くの人々が「国家が破綻する」ことはどういうことか疑問を抱いている中での出版である。
本書で取り上げられているのは、アイスランド、アイルランド、ギリシャの三国とアメリカのカリフォルニア州である。また、EU内の破綻国の命運を握るドイツの果たす役割と問題点にも一章が割かれている。
著者はベストセラーを連発する人気ノンフィクション作家である。処女作『ライアーズ・ポーカー』では1980年代の投資銀行の内幕を暴き、大いに話題となった。最近ではサブプライムローンの内幕を描いた『世紀の空売り』、アメリカンフットボールを題材とした『ブラインドサイド』、メジャーリーグのアスレチックス球団の経営者を取り上げた『マネーボール』などがある。同作はブラッド・ピット主演で映画化されてヒットしている。
本書は著者が雑誌『ヴァニテフィ・フェア』に寄稿した記事を元に書かれたものである。実際に金融危機や国家破綻を経験した国を訪れ、政府の担当者やバブルに踊った個人を取材して、政府が破綻した社会に何が起こっているか緻密に報告した“ルポルタージュ”である。