ハロウィンの何が日本人を夢中にさせるのか 外国人も目を見張る衝撃的な熱狂ぶり

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仲間と共に自由に仮装する女性たち

もうひとつ、「女性の変身願望をくすぐるイベントになってきているから」と分析するのは、国内で80店舗を展開するジュエリー会社サダマツでブランドマネジャーを務める佐久間千代美さんだ。

海外経験が豊富な佐久間さんによれば、「日本では、人と同じであることや人から好かれることを学校で徹底的に叩き込まれているので、実際には欧米人以上に、自分を表現することや変身することへの潜在的願望が強い」。ジュエリーの世界においても、「自分らしさを表現したい」「自分の夢や願を叶えたい」「変身していく自分を見守って欲しい」といった需要が根強い。

こうした中、仲間と共に安心してはしゃぐことができ、さらにはその様子をSNSで自ら発信することができる日本版ハロウィンは、女性が本音パワーを爆発させる重要な場になっていると言っていい。

SNSもハロウィンの普及に一役買った。仲間とともに仮装して「写メ」したものをアップした投稿は注目とともに共感を集めやすい。確実に「ネタになる」材料である。その好感度の高いネタが短期間に多くのユーザーから拡散されたことが、ハロウィンの普及に大きく貢献したと言えるだろう。

冒頭の中国人留学生が日本版ハロウィンは、日本独自の文化ではないかと分析していたように、私たち日本人としても、この盛り上がりを日本の新たな文化であると位置づけていきたいところである。

「マーケティングの神様」であるフィリップ・コトラーは、「消費活動とは文化活動である」と表現しており、企業やイベントが長きにわたって愛され、ブランド化していくためには、そこに文化的に意味のある活動が不可欠であると指摘している。つまりは、長きにわたって愛され定着していくブランドやイベントには、自分たちの精神を感動させ鼓舞する文化的価値が不可欠であると言っているのだ。

そしてハロウィンは秋を代表する「祭り」となった

日本では、秋はもともと「実りの秋」「収穫の秋」で、日本の文化を象徴するお祭りが最も多く行われるシーズンでもある。一方、都会には気軽に参加できるようなお祭りは秋には少なく、ましては「お神輿をかつぐ」といったことは現在の消費者にはハードルの高い文化活動だろう。

対して日本版ハロウィンは、仮装をしようがしまいが、パーティや行列に加わるだけで参加できる、とてもハードルの低い「お祭り」である。そして、お祭りという「刹那」の「一瞬」を味わい尽くすことも日本人の重要な文化であり、日本版ハロウィンは、日本の新旧が合わさった文化活動であると位置づけたいものだ。

現在のマーケティングにおいて最も重要なことのひとつに、「鼓舞する(Inspire)」ということがある。前述のとおり、現在の消費者は消費活動において、従来からの機能的価値や情緒的価値に加えて、精神的価値を求めており、精神的価値を訴求することが「鼓舞すること」なのである。

漢字で「鼓舞」するとは、「鼓(つづみ)を打ち、舞(まい)をまう」というまさにお祭りでの文化的活動のことであり、人々の間に熱伝導を起こすものである。日本版ハロウィンにおいては、鼓舞されることが非常に重要であり、これこそ日本市場攻略に最も重要なポイントであることは間違いないだろう。

(写真:今井康一)

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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