同性愛カップルを悩ます子供の「新学期問題」 好奇心や無知にどう向き合うべきか

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最近の研究では、同性愛カップルの子供たちの58%は11歳までに、家族について、他人から悪口やマイクロアグレッションを言われる経験をするという。この研究は8月にトロントで開かれた米心理学会の年次総会で発表された。

「2人の父親がいる子供は、ほかの子から『で、ママはどこにいるの?』とか『どうしてママがいないの?』と聞かれるかもしれない」と、ケンタッキー大学のレイチェル・ファー准教授(発達心理学)は言う。ファーは同性愛カップルの養子として育てられた49人の子供を、幼稚園入園時から約8年にわたって追跡調査した。

学校にせっせと顔を出す

ファーによれば、同性愛カップルの子供たちに投げかけられる質問や発言には、単なる好奇心や無知、もしくは「家族とはこういうものだ」という一般的なイメージから来るものもある。

「子供たちは自分の住む世界がどんなものか知ろうとしている。母親と父親がいる子供しか周囲にいなかったという可能性もある」。だが同性の両親をもつ子供たちにとってそうした発言は「乗り越えるのが難しいと感じられることもあるだろう」とファーは言う。

その結果、同性愛カップルは子供の通う幼稚園や保育園選びに非常に慎重になるし、積極的に子供の通う園や学校に関わっていくケースも多い。年度初めには担任の先生に会いに行って家族を紹介し、性別に中立な言葉を使うよう頼む。学校でのボランティア活動にも精を出し、子供の教室にしばしば顔を出す、といったようにだ。

だが子供が大きくなって中学や高校に進学すると、親は同じように学校に働きかけていくことができなくなる。

アトランタ郊外に住むウィリアム・キネーン(38)がパートナーと一緒に、6歳の娘ライリーが自宅近くでスクーターに乗っているのを見守っていたときのこと。近所の10〜11歳の女の子が近づいてきてこう聞いた。

「ねえ、どっちがライリーのお兄さんで、どっちがライリーのパパなの?」

キネーンはどちらもパパだよと答えた。するとその子は、ライリーのママと結婚しているのはどっち?と尋ねた。キネーンは、ライリーは養女なのだと説明した。質問はさらに続いた。

「あの子が養子というものについて誰からも聞いたことがなかったのは間違いない」とキネーンは言う。「あの日の晩、あの子の家の夕食の食卓の会話はいったいどうなったことやら」

ファーは、同性愛カップルの子供たちがほかの子供たちよりもいじめられることが多いのか、子供たちの対処機制がどんなもので、ストレスを乗り越える力はどのくらいかといったことを調べたいと考えている。研究では、子供たちの80%が自分たちの家族がよそと違うことを認識する一方で、自分の家族は「特別だ」と考えていることが明らかになった。

2人の父を持つ男の子は研究チームに対し、「男ばっかりの家族っていいよ」と語った。別の子は「うちの家族には白い人もいるし茶色い人もいる。よその家は全員白いか全員茶色いかどちらかかもしれないけど」と言った。

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