「消えたコメ」の謎、供給不足の原因は不明のまま 価格高騰が消費者や政策翻弄
政府が発表する収穫量に疑念を抱く農家や集荷業者もいる。天候が温暖であれば理論上の収穫量は増えるが、昨年の夏は記録的な猛暑で、多くの生産地で収穫量が減少した可能性が高いとの見方もある。
岡山県でコメ農家を営む高田正人氏は、「誰がコメを隠しているか分からないが、作況指数が実際はもっと低いのではないかと思っている」とし、「高温障害の影響は必ず受けているだろう」と述べた。

進む農業離れ
約100万トンを保有している政府は、「消えた」とされるコメの不足分を補うため、計21万トンの備蓄米を放出する計画だ。
農業市場研究を専門とする東北大学の冬木勝仁教授は、たとえ追加供給があっても価格は下がらない可能性があると指摘する。完全価格指定で小売りや外食に売るべきだったとし、集荷業者を対象とした入札の実施について、政府の方針が反映されやすいところに放出するのだろうと分析する。
コメは日本人の主食であるにもかかわらず、稲作は衰退の一途をたどっている。農水省によると、日本のコメ農家の平均年齢は約71歳で、個人農家の数は15年から5年間で25%減少した。コメの収穫量自体も減少傾向にある。

酒造大手、白鶴酒造の水谷仁生産本部長は、コメ農家の経営は過酷だと指摘。時給は低く、休日も働く農家もあると聞いたことがあると言う。「日本の農業は高齢化が進み、農業離れが進んでいる」とし、「農業をやめる人が今後さらに増えていくと供給が追い付かなくなり、長期的に値上げ傾向は続くだろう」と述べた。
--取材協力:吉田昂、照喜納明美、長谷部結衣、中丸諒太郎、横山恵利香
著者:エディ・ダン
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