「消えたコメ」の謎、供給不足の原因は不明のまま 価格高騰が消費者や政策翻弄
「(コメは)間違いなくある」。江藤拓農林水産相は2月21日の記者会見でそう述べ、「どこかに隠れてしまって足りないということはあるが、総量として足りないという認識はない」との見解を示した。
価格高騰は、昨年8月に政府が南海トラフ地震発生の可能性について臨時情報を発表してから加速した。23年産のコメが高温による不作で既に供給が薄い中でパニック買いが起こり、臨時情報の呼びかけが終了した後も価格は下がらなかった。
コメの店頭価格は、2月24日の週に5キログラム当たり平均3952円と、前年比で95%上昇した。価格高騰を受け、コンビニエンスストア大手、セブン-イレブン・ジャパンも1月におにぎりや弁当など一部米飯商品を値上げした。
こうした物価の高止まりが続けば、2%の「物価安定の目標」を掲げる日銀に追加利上げを促す要因になる。日銀は1月の金融政策決定会合後に公表した展望リポートで、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)について、前回の見通しと比べて24年度と25年度の見通しがコメ価格上昇などの影響で上振れていると説明している。
「家庭ではコメの購入頻度は高いため、日銀はコメ価格の上昇を無視できない」と、SOMPOインスティチュート・プラスの小池理人上級研究員は分析する。
消費者の不満
コメの流通は以前、集荷業者を中心に規制されていたが、04年の食糧法改正で計画流通制度が廃止され、流通と販売が原則自由化された。最近SNS上では、農作地帯を車で駆け巡り、直接コメを買い占めているグループについての情報などが飛び交っている。
「誰かが悪意を持って暗躍しているわけではない」と滋賀県のコメ農家、家倉敬和氏は言う。「投機的な狙いでコメをストックしている中間業者もいるかもしれないが、それを誰も責められない。ビジネスとして当然のことだ」と述べた。