神保:これまでのアメリカは世界の秩序を安定させるために、パワーと制度の両方を使ってきました。パワーはアメリカの軍事力や金融力、制度は国際機関やルールです。でも、おそらく今のトランプ政権は、制度とかルールに関しては、ほぼ関心がない状態だと思います。
要するに、国連決議や、これまでの合意などを無視しようとしている。それが「我々はガザを長期的に保有する」の発言にもつながったのではないでしょうか。とんでもない話ですよね。そういうことが平気で議論されていること自体、ワシントンで何か革新的な変化が起こっているのではないかと注視しています。
アメリカは壮大な実験国家
窪田:私は2000年に渡米し、大学助教授として研究活動に取り組んだり創薬ベンチャー企業を立ち上げたりしましたが、アメリカの安全保障に関わる人たちに話を聞くと、平気で「Might is right(力を持っているものが正しい)」と言うんです。本気でそう思っている人が一定数いることに驚きがありました。今、アメリカ人の多くが、秩序よりもパワーに重きを置いているんだなと。
神保:だからトランプ氏が共感されているのでしょうね。
窪田:私自身、アメリカは壮大な実験国家だと感じていて。いろいろなことに対して、破壊的イノベーションによって失敗もすれば、成功もしている。それを許容することで成り立っている国なんじゃないかと。トランプ氏によってアメリカが極端に衰退する可能性もあるけれど、一気に世界を安定させる可能性もなくはない。日本のように安定性を重んじて、ほとんど変われない国から見ると、ちょっとうらやましいところもあります。
神保:たしかにアメリカは変化に強い。トランプ氏は、AIや無人技術、暗号資産など、それが未来のスタンダードを制する重要な領域だと判断すれば、徹底的にお金を費やしていきますからね。