安全保障の専門家が語る「トランプ政権の今後」 同盟国重視の戦略から、米国中心の拡大戦略へ

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神保:トランプ氏が目を向けているのは、“Make America Great Again”(アメリカを再び偉大な国に)のMAGAムーブメントを起こし、トランプ氏を支持している層です。彼らが持っている価値観にすべて還元されるような形で世界を見ている。例えば、アメリカの産業にとって雇用と産業競争力の面からマイナスになるものがあれば、それを徹底的にやめていく。そのための科学的な根拠がなかったとしても、強引に進めていくことになるでしょう。

窪田:もちろん日本も対象ですよね。

神保:そうですね、でも一番の矛先は中国です。その前哨戦としてカナダやメキシコへの関税、そしてパナマ運河やグリーンランドの支配があると考えられます。

トランプ氏が進める、大陸国家型の戦略とは

神保:アメリカの国家戦略の源流であり、特に第2次世界大戦後のアメリカの超大国としての構造を支えていたのは、「世界の秩序の安定はアメリカの安定と一致する」の考え方でした。そのために同盟国の拠点をベースに、各地域を安定させていく戦略をとっていました。だから、ヨーロッパのNATO、中東のアメリカ中央軍の配置、アジアの日本や韓国、オーストラリアとの同盟を大事にしていた。地域を安定させることによって、アメリカの世界的な地位を維持する。海洋国家としてのネットワークこそが“力”だとする発想です。

窪田:トランプ政権は、そうしたこれまでの国家戦略とは違う考え方だと?

神保:どちらかというと、トランプ氏は大陸国家型の発想だと思います。アメリカを中心として同心円状に広がっていく世界において、自分の宗主権を拡張させていくことで安定を得ようとしている。地図を思い浮かべていただくと、アメリカが真ん中にあって、そこからカナダ、メキシコ、パナマ、グリーンランド、ガザと、徐々に広がっていくのが見えてきます。

窪田:アメリカの勢力を拡大させていくようなイメージですね。

神保:それと同時に移民の受け入れを止める。なぜなら、アメリカ国内の市場に新興国が入ってきて、雇用を食いつぶしていると考えているからです。

窪田:そうした思想によって、就任直後からの大混乱が引き起こされていると。

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