(第35回)日本製品が築いたブランドは崩壊寸前

そもそもブランドが力を持つのは、製品の機能に関する詳しい情報が、一般の消費者には完全に理解できないからだ。「よく分からないが、トヨタは現代より故障が少ないだろう」と思っているだけのことである。

「ブランドが重要なのは、現実の世界では情報が不完全だから」を逆に言えば、情報が不完全であるがゆえに、ブランドは容易に崩壊してしまう。そのきっかけは、誰かが「王様は裸だ」と叫ぶことだ。その声を聞いた消費者が幻覚から覚めると、確立されていたブランドは、一気に崩壊してしまう。

アメリカ人が居間にVIZIOのテレビを置かずにソニーを置くのは、ブランド力のためだと述べた。しかし、アメリカの消費者は、すでに映像の質に差はないことを知っている。だから、誰かが「王様は裸だ」と叫べば、居間のソニーはあっという間に姿を消してしまうだろう。

日本車のブランドは落ちつつあるが、いまのところ誰も裸の王様だとは思っていない。しかし、この状態が今後も継続する保証もない。乗用車がテレビと同じ状態に落ち込む危険は否定できないのだ。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)

(週刊東洋経済2012年2月18日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。撮影:尾形文繁
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