だから震災がシェア低下の原因ではない。日本車のブランドが失われているのだ。消費者情報誌『コンシューマー・レポート』で、ホンダ・シビックは長らく小型車の第1位だったが、11年に「推奨せず」になった。代わりに第1位になったのは、韓国・現代自動車のエラントラだ。現代のシェアは、10年の4・6%から11年には5・1%となり、日産の8・2%に迫りつつある。韓国車躍進には為替レート変化の影響も大きいのだが、それだけではない。
それと対照的に、トヨタ車のブランド力喪失は著しい。これには、09年に起こったアクセルペダル問題への対応が大きく影響している。私はこの頃、海外メディアの取材を何件も受けた。彼らの質問は、「なぜトヨタのトップ経営者は、この問題に迅速に対応しないのか」ということに集中していた。
トヨタには、「良ければ売れる」との自信があったのだろう。しかし、これは過剰な現場信仰だ。「良いこと」は確かに「売れること」の必要条件だ。しかし、十分条件ではない。良いからといって、売れるわけではないのである。死亡事故が起こったとき、トップ経営者が納得の行く説明をしなければ、ブランドは維持できない。
80年代の日本車が、努力によってアメリカ車に追いつき、追い越したのは間違いない。それによってブランドが確立された。しかし、90年代以降は、円安に助けられて売れただけではなかったのか? 実際、円安のメリットが消失すると、韓国車に比べて日本車が隔絶的に優れているわけではないと、アメリカの消費者は感じ始めた。