
筆者は昨年12月の栃木でこのクルマにドライ路面で乗っており、最高時速120kmでの高速周回路や短いワインディング路で走行しているが、今回、繊細かつ慎重な運転が必要となるスノーコンディションを走らせて、より一層「ホンダらしさ」を感じ取ることができた。
冒頭で述べたように、このクルマに対して「楽しい」という気持ちが芽生えたのだが、その裏には「五感に響く」というホンダの設計理念がある。
「五感に響く」とは、決して「ガンガン攻めて走って楽しい」という意味ではない。ドライバーの意思に対して、クルマが「ほどよい動き」をすることを指すのだと、試乗を通して感じた。

たとえば、タイヤからサスペンション・車体、さらにシートやステアリングに伝わる路面からのフィードバックが「ほどよい」のだ。音や振動を完全に遮断するのではなく、ドライバーに対して「伝えるべきもの」をしっかり伝えてくれる。
また、車両の制御についても、クルマ主導で「ドライバーの感性を封じ込める」領域には踏み込まないところがよい。実に「ホンダらしい」と思う。いわゆる「手の内感(てのうちかん)」があるのだ。
「生活4駆」にとどまらない走りの追求
これまでの筆者の経験上、FF(前輪駆動車)で、クルマのお腹の下にプロペラシャフトがなく後輪をモーター駆動する4WDは、メーカーによって設計思想がかなり違う。
具体的には、ほぼFFで走行し、後輪が滑ってからモーター駆動をじんわりと効かせる「大人しい生活4駆」もあれば、クルマの挙動を先読みしながら、前後輪のトルク変動を短時間かつ緻密に行うアクティブなタイプもあるといった具合だ。後者の代表格が、日産の「e-4ORCE」である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら