連覇の「ヴィッセル神戸」楽天IT技術の凄い活用法 AIを駆使してクラブ全体のデータ管理を推進

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「ホームゲーム1回当たりで集まるアンケートは1000件近くにのぼります。それを生成AIがポイントを要約し、情報を絞り込んでくれれば、スタッフはそれを基に活用策を考えればいい。

オンラインストアで販売するグッズも過去の販売実績や傾向、購入者の年齢層などを踏まえながら生成AIにプランニングの素案を出させたうえで、スタッフが最終的に決断しています。

約60人のスタッフのうち、楽天グループからの出向者も10数名はいますし、テクノロジーの導入・展開のスピード感と柔軟性は他クラブにはない強みです。サッカー界で率先してIT技術を活用したことが、観客増・入場者収入増に大きく貢献したと思っています」(松澤室長)。

一方、生身の人間がプレーするサッカービジネスにおいて、多くの業務をITやデータ活用に任せればいいというものではない。現場のライブ感を大事にしつつ、いかにして魅力を伝えていくかということは極めて重要なテーマだ。

神戸では試合を取り巻くインサイドストーリー動画を試合翌日に公式ユーチューブで配信している。広報チームは当日対応だけでも多忙を極めているが、試合終了後に人手で動画を編集・作成し、熱の冷めないうちに提供している。

「IT技術やデータを活用する部分と、職人技の部分を切り分けて、やるべきことの優先順位をつけています」(松澤室長)。

こうした施策の結果が過去2年のJ1連覇であり、2024年の天皇杯との2冠達成なのだろう。そして2025年はACLエリート制覇・アジアタイトル獲得も目標に掲げている。

200億円クラブへ一番乗り?

週末のJリーグのホームゲームなどは会場が満員近くになるため、これ以上の大幅な集客増は難しいが、ACLやカップ戦はまだ増やせる余地がある。

スポンサー営業についてもまだできることはある。近年は大迫勇也、武藤嘉紀らリーグを代表する選手の獲得、好成績によって協賛企業の数が増え、金額も上昇傾向にあるのは確かだが、もう一段階上を見据えていく必要がある。

Jリーグの野々村芳和チェアマンは「200億円クラブを作りたい」と口癖のように話しているが、神戸がその一番手になるポテンシャルを秘めている。2025年以降の神戸がどのような軌跡を辿っていくのか。チーム成績のみならず、事業面の動向も注視していきたい。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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