飼い主さんが言うように、ケガ自体は小さなもので、傷もすぐにふさがった。しかし、体内では皮ふのバリアを突破した病原体が増殖を続けており、体が小さなハムスターではそれが命取りとなりました。
このような感染症は、体の小さなハムスターにかぎらず人間にも起こりうるもので、ときには重症化して死に至ることがあります。
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そんなわけで、テレビの動物バラエティー番組やYouTubeの動画などで、例えば、免疫が未熟な人間の赤ちゃんとネコがじゃれ合っている映像を見るとき、僕はどうしてもみなさんのようにほほ笑ましく思えず、つい顔が引きつってしまうんですよね……。
赤ちゃんがいる家庭で動物を飼っている方は、赤ちゃんのそばをちょっと離れる際、赤ちゃんと動物だけの状況にはしないでほしいと思います。「うちのペットは咬まないから大丈夫!」という油断が、思わぬ事故につながります。
ハムスターの飼い主さんにこの病理解剖の結果をお伝えすると、「いつもじゃれ合っていて、仲のいい2匹だったので安心していたのですが、こんなに悲しいことが起きるなんて思いもしませんでした」と、絶句しておられました。
大切に飼っていたハムスターが亡くなったという今回の経験は、飼い主さんにとって大変つらいものになったようです。僕としては、次に動物を飼う際に、せめてこの教訓を生かしてほしいと願うばかりです。
一緒だと病気のリスクも高まる
今回ご紹介したのは突発的な事故の例ですが、異なる動物が同じ場所にいると、病気の問題を引き起こすこともあります。
前回ご紹介した【関連記事:「鼻が反り返った小さなヘビ」が急死した本当の訳】ヘビとカメの例はその代表です。リクガメがよく保有しているある種のアメーバは、リクガメの健康には大きな害を及ぼしませんが、ヘビに対しては致命的になることがあります。
また、ウサギが上気道や気管に保有しているボルデテラという細菌は、モルモットにはしばしば高い致死率を示します。