日本人が体験、イタリア「完全無料のがん治療」 そして気になる「高額療養制度見直し」の行方
ちなみに観光客も救急の場合は無料で応急処置をしてくれる。そしてがんをはじめとする重大な病気、難病、慢性疾患等を持つ人は、イタリア国民はもちろん、私のような外国籍の長期滞在者も治療費は完全免除となる。要するに、この健康保険システムに対する、いわゆる保険料というものをイタリア国民は納めていない。
100%医療費を賄うイタリアと38%だけの日本
ではその財源はどこから?というと、国民から集めた累進課税の所得税から賄っている。イタリアの個人所得税は所得額によって4段階に分かれており、その税率は年収2万8000ユーロ(約450万円)までは23%、2万8001〜5万ユーロ(約800万円)までが35%、それ以上が43%と決められている。例えば年収が4万ユーロ(約640万円)の人は、2万8000ユーロまでは23%課税され、それ以上の部分に35%の税率が適用されるという。
この所得税を財源に、イタリア政府はどれぐらい医療費を国民のために支出しているのか。医療費の分析を専門に行う非営利団体GIMBE財団の最新の報告書によると、2023年度、イタリアは国民1人当たり3574ドル(約55万4000円)を支出したとある。これはGDP比6.2%で、OECD平均の6.9%をかなり下回る、欧州内では16位、G7では最下位だ、とイタリアの経済新聞『il sole24 ore』2024年9月3日版で手厳しく批判されている。
がん治療を無料で受けることができた私からみたら、とても気前がよく見えるイタリアだが、それよりもっとすごい国が欧州にはひしめいているということか。確かにイタリアは設備が古くてボロボロの病院が多く、医療従事者不足や南北の格差など資金不足に関わると思われる問題も山積みだ。
では日本はどうなんだろう。OECDのデータによれば日本の医療支出はGDPの11.5%を占めるとなっていて、イタリアの2倍近いことがわかる(ただし算出方法の違いにより、厚生労働省のデータによれば、2022年の国民医療費のGDP比は8.24%)。だがその財源は国、および地方自治体からの支出が37.9%、保険料50%、患者窓口負担11.6%。つまり日本の医療費は約38%だけが税金で賄われ、残りは保険料や窓口負担、つまり患者負担ということだ。
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