日本人が体験、イタリア「完全無料のがん治療」 そして気になる「高額療養制度見直し」の行方

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所得税や付加価値税(日本でいう消費税)は確かに払ってはいるが、それで治療費が全部タダというのは本当だろうか? だがそのときは、まずは治療をして治すことが先決だと考え、治療費についての詳細を調べることはしなかった。

食事や薬、シリコン製乳房も無料

そして始まった5カ月にわたる抗がん剤の治療中、私が使ったお金といえば病院へ車で通うためのガソリン代だけだった。抗がん剤の点滴代も腫瘍内科の診察料も一切かからない。もちろん無料だからといって予約が取れないということもなく、がんセンターのベルトコンベアーに乗せられたように、スムーズに治療は進んでいった。

ちなみに、病院にいる間は、飲食するお金もかからない。私は抗がん剤治療中は断食をすることにしていたが、治療室までランチが運ばれ、点滴をしながらむしゃむしゃ食べている人をよく見かけた。順番待ちの間に食べたい人は、看護師さんに言えば病院内の食堂チケットがもらえるということだった。

ベッドにいる患者たち
治療を受けながらバナナやチョコレートを食べている人もいた(筆者撮影)

抗がん剤治療に伴って「起こるかもしれない副作用に対処するための薬リスト」というものを渡された。多少の副作用でいちいち病院に電話されても対応できない、可能な限り自分でなんとかしなさい、というシステムなのだ。担当の腫瘍内科のドクターが書いてくれた吐き気止め、解熱剤、抗生物質、白血球の低下を抑える注射などなど山ほどの薬のリストをホームドクターにメールで送り、処方箋を作成してもらう。それを持って薬局に行くとその薬代も全部タダ。

デイ・ホスピタル
抗がん剤は基本的にデイ・ホスピタルで日帰り治療だ。診察室と血液検査センター、治療室に分かれていた(筆者撮影)
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