日本人が体験、イタリア「完全無料のがん治療」 そして気になる「高額療養制度見直し」の行方
そして5カ月の抗がん剤治療が終了し、1泊2日の入院で乳房全摘手術を受けた。新しい設備のきれいな入院棟は、全室2人部屋、各部屋にトイレ、ビデ、シャワー、テレビ完備。食事はまずくて贅沢を言えばキリがないが、これで完全無料とは本当に驚きだった。
身体の中に異物を入れる再建手術はしたくなかった私には、外付けのシリコン製乳房も無料で支給された(再建手術も保険適用、つまり無料)。普通に買えば1つ300ユーロ(約4万8000円)ほどするという、ふわふわと柔らかいシリコン製のおっぱいを2つ、ありがたくいただいた。
その後1年間、3週間に一度、再発予防のため低容量の抗がん剤の点滴治療を受けたが、これももちろん無料。治療終了から1年経った今は、定期検診や、乳がんサバイバーのほとんどが5〜10年間毎日服用するというホルモン療法の錠剤も、無料で支給されている。
この薬、アメリカでは1箱300ドル(約4万6000円)もするんですって!と定期検診中にドクターが言った。アメリカに暮らしていて乳がんになったイタリア人女性が「アメリカでは高くてやってられない」とアメリカ人の夫と共にイタリアに引っ越してきて私の患者になったのよ、と。この薬がそんなに高価なものだったとは。私が今まで受けた抗がん剤やらさまざまな薬、治療の値段は推して知るべし、といったところか。
移民も治療を受ける“権利”がある
それにしてもイタリアのこの気前の良さはなんだろう? イタリアの医療保険制度について調べてみると、以下のようなことがわかった。
イタリアでは、裕福な人も貧しい人も外国人も、すべての医療サービスを無料、または安価に受けられることになっている、というのは前述した通り。14歳以下は完全無料。移民の子どもであろうと、たとえ不法移民でも、14歳以下ならイタリアの国民保険に加入でき、すべての治療をイタリア人同様受ける“権利”がある、ということだ。トランプ大統領が聞いたら、びっくりして卒倒してしまうだろう(大人の場合は滞在許可証を持っている、つまり不法でない移民に限られる)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら