日本人が体験、イタリア「完全無料のがん治療」 そして気になる「高額療養制度見直し」の行方

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2023年、1月。30年近く暮らした北イタリア・トリノ近郊の病院で、私は乳がんの告知を受けた。腫瘍の大きさは2センチでステージ2、転移なし。だが、その腫瘍は「悪性度が高いタイプで転移や再発の危険性が高い」という理由で、抗がん剤治療を5カ月、その後手術して乳房全摘、という治療計画だった。

「病院や検査が好き」という変わり者の私は、そのせいか、がん告知を受けてもショックはさほどなく、治療をすればさっさと治ると信じていた(実際、今のところ抗がん剤治療も手術もうまくいき、寛解している)。だから病気そのものと治療に対する恐怖は感じなかったが、告知されて真っ先に頭に浮かんだのは、治療費のことだった。そして治療に伴ってストップしてしまうだろう収入のことも気になった。

日本ではがん保険なるものが一般的に存在するぐらいだから、イタリアだってがん治療というのはさぞかし高額なのだろう、と心配になったのだ。

がん治療費は「全部タダ」だった

イタリアの医療保険制度はホームドクター制で、ホームドクターが処方箋を書けば、どんな治療も無料、またはかなり低価格で受けられる。というのは建前で、実際は大病院での検査や専門医による診療は、公的保険制度を使う場合は予約がなかなか取れず、1年先などというケースもザラ。だから急ぐ場合はホームドクターを通さず、診察や検査を有料(保険適用外)で受け付ける医療機関を受診するというのが現実なのだ。

実際私も、2022年の年末に乳房にしこりを発見したときは、急いで診断してほしいと思ったのでホームドクターをすっ飛ばし、最終的に治療を受けることになったがんセンターに、保険適用外の予約を入れた。2週間後に診察と検査を受け、診断がついたときに支払ったのは、検査料込みで270ユーロ(約4万3000円)。

診断をつけるだけでこれだけの支出があったのだから、抗がん剤治療やら手術やら入院となったら、いったいどれだけかかるのだろう? そう思った私は、告知の面接の際にドクターに聞いてみた。治療費って、どれぐらいかかるものですかね?と。するとドクターは笑ってこういった。

「全部、タダですよ」と。

でも私はガイコクジンですよ、先生。イタリア人と結婚しているので滞在許可証はあるものの、イタリア国籍はないんです(これは日本政府が二重国籍を認めないせいで、私の過失でもイタリア国の過失でもない)と伝えると

「奥さん、イタリアに住んで税金を納めているなら外国人でも大丈夫ですよ」と。

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