日本人が体験、イタリア「完全無料のがん治療」 そして気になる「高額療養制度見直し」の行方

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
IRCCS
筆者が治療を受けた、北イタリアピエモンテ州のがんセンター「IRCCS」。予算が少なく設備が古いと批判されがちなイタリアの医療施設としては例外的に新しく立派なのは、がん研究施設として潤沢な寄付が集まるせいだろうか?(筆者撮影)

2年前、長く暮らすイタリアで乳がんに罹患して治療を受けた私は、がんの治療費がすべて無料だったことに驚いた。そんな私が最近気になっているのが、日本の「高額療養費制度見直し」というニュースだ。

日本の「高額療養費制度」とは

30年近く日本に暮らしていないので、高額療養費制度というものがあることさえ知らなかった私だが、患者が月々に負担する医療費が高額になり限度額を超えた場合、収入に応じて国が負担してくれるという素晴らしい制度だという。ところが、その限度額が段階的に引き上げられることになったという。

そのニュースを読んで私の頭にすぐ浮かんできたのは、知り合いのフリーライター仲間のことだ。シングルマザーだったその人は、数年前、乳がんと診断されたが、高額な治療費のこと、そして治療に伴って仕事もできなくなることを心配して治療を受けず、結果亡くなってしまった。

高額療養費の存在を知っていたかどうかは不明だが、知っていて利用していたとしても、彼女の年収が600万円程度だったとすると、月に8万円は自分で負担しなければならなかったのだ。1回だけ8万円というならまだしも、がんのように何カ月も、場合によっては何年間も、毎月の8万円というのは大変な負担だろう。さらに収入ストップがあればかなり厳しい状況になっただろう。

その限度額が引き上げられるという話だ。

次ページイタリアでのがん治療
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事