ドイツ総選挙・極右と極左の2人の女性党首に注目 2月23日投票、AfDとBSWはどこまで躍進するか

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ザーラと左翼党との衝突は、移民問題にあった。ザーラは移民反対を唱えたのだ。その理由は、まずはドイツの労働者階級の利益を確保すべきと主張したからだ。AfDが拡大する中で、ドイツの労働者が左派ではなくAfDに流れつつある中、ドイツ人労働者を守ることを第1に置くという政策に出たのである。

経済政策としてドイツ主要産業を守り、国民のセキュリティネットを充実することで、AfDに流れる労働者層の票を食い止めろと、ザーラは主張する。そして大企業や富裕層への税金を引き上げ、移民規制、文化的アイデンティティの確立などを政策として掲げる。

極右と極左の主張が似てきた?

そのせいか、すでに選挙の下馬評では6%を獲得している。一方の左翼党のほうは4%と伸び悩んでいる。2021年の選挙では左翼党は6%だったので、少なくとも2%はザーラに流れ、しかもそれ以外からも流れていると言える。もはや左翼党以上に左派の中心だといえる。

ただ、極右政党であるAfDの主張とある意味、よく似ている点が気になる。

彼女の思想は、極右と極左の融合であるようにも見える。ある種、国家社会主義のようなモデルに似ている。だからこそ、左翼党からはマルクス主義への裏切りだと批判され、SPDからは反EUと反移民だと批判され、CDUとFDPからは、危険なポピュリストだと批判されている。

極右と極左がドイツの経済危機の中で似てきたのは、ドイツの保守化を意味するのか、それともSPDやCDUが行ったウクライナ戦争支援によって生まれた、ドイツ経済危機の結果なのか、それを問うのが今回の選挙だといってよい。

ただ、こうした極右と極左の拡大はドイツだけの現象ではないことを銘記しておかねばなるまい。フランスではメランションやブザンスノーがそうした新しい左派政党を立ち上げ、一方でマリーヌ・ルペンの右派政党も躍進している。オーストリア、イタリアなど各地でこうした動きが起こっている。

ドイツでは、最近でも海賊党や共和党など生まれては消えていった党が多いが、この新しい政党はそのまま存続するのか、さらには政権を得るにまで至るのか、それは西欧世界の経済的衰退と深く関係していることだけは確かである。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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