ドイツ総選挙・極右と極左の2人の女性党首に注目 2月23日投票、AfDとBSWはどこまで躍進するか

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極右政党は、どの国においてもその思想において一致しているところがある。それは祖国愛と家族愛だ。

その家族愛は、昔ながらの男女愛であるがゆえに、同性愛に対する嫌悪が奥底にある。また祖国愛という点で外国人への憎悪も根強い。それが移民排斥と人種差別につながっている。

その党首が外国人と結婚し、なおかつ性に関して自由な考えかたをもつというのは、きわめて不自然かもしれない。

もう1人のAfD党首はマルクスにつらなる家系

AfDの創設者の1人は、ベアトリクス・フォン・シュトルヒだ。彼女も女性だが、彼女の祖父はナチス時代のヒトラー政権の財務相だったヨハン・ルードヴィヒ(ルッツ)・グラーフ・フォン・シュヴェリン・クロシック(1887~1977年、旧東ドイツのラートマンスドルフ出身)という、由緒ある貴族の末裔である。

彼は戦後ニュールンベルク裁判で10年の判決を受け服役したが、1951年減刑され、天寿を全うする。

しかもこのクロシックの祖母は、あのカール・マルクスの妻イェニー・フォン・ヴェストファーレンの母違いの姉である。共産主義者とナチス、奇妙な取り合わせだが、この元財務大臣は『大きな炎の時代』(Die Grosse Zeit de Feuers)という3巻本の厚い書物を書いている。

その第1巻(1957年)最終章は、「自由の夢と平等の宣言」である。副題は「1848年革命。ラサール、マルクス、エンゲルス」だ。その最後に自らの先祖であるマルクスの妻、イェニー・フォン・ヴェストファーレン(1814~1881年)についても言及している。

彼はマルクスの妻が貴族の出身であること、そしてマルクスが、祖国ドイツに愛と憎悪の両面をもっていた屈折した人物だったことを強調する。

確かにマルクスの妻の家系は保守的なドイツの官僚貴族が多い。たとえば1850年代のプロイセンの内務相だったフェルディナント・フォン・ヴェストファーレン(1799~1876年)である。

マルクスの親戚にも、オランダの世界的電機会社フィリップスの創始者である大ブルジョワ、フィリップス家の人々がいる。ベアトリスは貴族の血を引いている。AfDの中にある、ある種ドイツの伝統的流れは、ドイツの旧貴族の流れから来ているともいえる。

しかし、そうした流れは一部の人々には受け入れられても、ここまで多くの人から支持を得ることはあるまい。すでに2021年にAfDは10%の票を獲得し、今回の選挙の事前調査でも、現状でAfDは得票率20%を確保しそうな勢いだ。

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