ゴルフ人気コーチ、プロ試験合格で狙う変革 "自分たちのことしか考えない"に危機感

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こうした問題を一つひとつ解決するには、さまざまな立場で活躍するコーチを知っている自分がPGAの中に入って、ティーチングのレベルを向上させるためには何が必要かを議論していきたいと考えたのです。というのも、外部の人間が何か提言しようとしても、なかなか聞いてもらえないでしょう。そして、PGAの会員になるならティーチングプロではなく、トーナメントプレーヤーでなくてはと思っていました。

――そのほうが話を聞いてもらえるから?

そうです。ここもゴルフ界の残念なところですが、ゴルフ場でもどこでも、上手な人が偉そうにしているでしょう(笑)。

中井学(なかい がく)/1972年生まれ。14歳からゴルフを始め、米国留学を経てコーチに。テレビ、雑誌などで活躍してきたほか、『誰もいわなかったゴルフの基本』など著書多数

――ところで、中井さんがゴルフを教えるようになったきっかけは。

カリフォルニア州にあるカレッジのゴルフ部にいたときのことです。ある著名コーチのレッスンを受けろと勧められて行ったら、「きみのスイングは完璧だ。リズムとテンポだけ気をつければいい」で終わり。僕の時給が5ドルの時代、30分100ドルのレッスン代でした。こんなことだったら自分で究めようと、中古ビデオを購入し、働いている練習場の隅で自分のスイングを撮影して研究するようになりました。やがて、練習場に来ている米国人に「俺のスイングを撮って問題があれば教えてくれよ」と言われるようになり、「ここを直せばいい」と指摘するようになりました。

リハビリから得たスイングの基本

――腕の力を抜くことが大切だと、ずっと強調していますね。

僕は子どものころジャングルジムから落下して、骨折した左ひじが完治せず、その痛みをずっと抱えていました。あるとき、チームメートの彼女と雑談中にひじの話をしたら、「いい医者を知っているから紹介してあげる」と。その病院に行ったら、プロ野球の村田兆治選手や桑田真澄選手の手術を行ったことでも有名な整形外科医フランク・ジョーブ博士の病院で。博士に会った瞬間、これで治ると思って泣き崩れました。

――リハビリ中、片手でボールを打っていたのが原点ですか。

左ひじが治った直後に右手を骨折し、約1年間両腕を使えなかったのです。しかたなく片手打ちをしていたのですが、手を使うと飛ばないけれど、体をうまく使うと飛ぶ。僕が自信をもって「手の力はいりません」と言えるのは、そこからです。でも、日本では手を返せというのが一般的な教えで、僕の理論は亜流でした。プロに教えるうえでも、自分がやってきたことが正しいことを実証したいという思いはずっと持っていました。

――これからの抱負は。

ゴルフ場にゴルファーが戻らないと話になりません。以前、あるゴルフ場大手の経営者にゴルフ人口減少の対策について話をした際に、危機感がまるでないことに驚いたことがありました。ゴルファーを増やすことより、減らさないことが先決です。

明るい話題がないゴルフ界で自分が何をできるかわからないし、まったく通用しないかもしれない。でも、「しょうがないですよね」で済ますのは悔しいじゃないですか。あきらめたくないというか、じたばたしたいんです。トーナメントプレーヤーとしても、ツアーデビューに向けてがんばりますよ。

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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