50億円集め訴訟「エーアイトラスト」に賠償判決 高利回り「ソーシャルレンディング」のその後

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「どうにか投資家には資金を返済しないと収まりがつかないと感じている。収束の方法としては満額返済する意思で動いている。山本氏が持っている資産もある程度わかり、すでに差し押さえをしている。満額以上は返済される試算ではある」

2019年2月に行われた証券取引等監視委員会の検査官による聴取。エーアイの松本社長はこのように語っていた。検査官がまとめた報告書には、松本社長の発言に加え、次の一文が添えられていた。

「松本社長は、時折、大粒の涙を流しながら上記の発言をした」

エーアイや松本社長は、投資家の募集や融資において故意や過失はなく、山本氏の目的も知らなかったと主張した。しかし東京地裁は、問題となった融資案件の一部で松本社長と山本氏が「共謀」したと判断した。

山本氏ら4被告は控訴せずに判決が確定、全18被告のうち残りは控訴した。地裁判決がそうとう踏み込んだ内容だっただけに、高裁がどう判断するか予断を許さない。

エーアイの投資家は高い利回りに目がくらんだだけと、一笑に付す人もいるだろう。配当をまったくもらえず元本の200万円を失った投資家がいる反面、3600万円をつぎ込み550万円の配当を得た投資家もいた。差し引き3000万円の損失とはいえ、これをどう捉えるか。

ただ、太田弁護士は次のように指摘する。「投資家を勧誘する側がぐるになり虚偽の内容で募集されたら、投資家は気づきようがない。しかもエーアイは、財務局に登録された第二種金融商品取引業者だった。投資家に過失はなかった」。

刑事告訴した投資家もいるが

問題発覚から5年が経った2024年。刑事事件として取り上げてもらうため、最寄りの警察署に告訴した投資家がいる。「自分の身に起きたことを曖昧にされたくない」との思いからだ。

事件として受理はされた。だが、捜査の進捗は芳しくないようだ。融資先など当事者が多いことや、金の流れの解明に手間や時間がかかることもあるが、「被害を訴えた人の数も関係している」と告訴した投資家は考えている。

「警察も被害を訴える人の本気度を見ている。多くの人は『誰かが動いてくれる』と思って、被害を訴え出ることすらしないのではないか。それでは詐欺的な投資被害があったという事実は埋もれてしまう。そして今後も同様の被害が続く」

多くの人にとっては忘却のかなたであろうソーシャルレンディングで起きた問題。だが、融資型クラウドファンディングとして10%の利回りを超える商品が再び出てきた今、引き出せる教訓はあるはずだ。

緒方 欽一 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事