50億円集め訴訟「エーアイトラスト」に賠償判決 高利回り「ソーシャルレンディング」のその後

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エーアイは、積極的に官僚OBを役員に登用しコンプライアンスやガバナンス体制を強化していることを売りにしていた。官僚OBの存在は、公共事業関連にくい込む姿勢を投資家にアピールする材料にもなった。

判決で賠償責任があるとされた官僚OBの元役員5人は、財務省や国土交通省の課長補佐クラスであったり、関東財務局で金融証券検査官を務めたりといった経歴を持つ。5人には含まれていないが、防衛省の審議官クラスの幹部もエーアイの社外役員にいた。

訴訟ではこれら元役員も証言台に立ち、融資の実務には携わっていなかったと主張した。営業担当役員として融資の決裁権者になっていた官僚OBは、「私が最終的な決裁権者であるとの感覚は持っていなかった。最初から今に至るまで」と述べた。

元役員5人は週1~2回の勤務で月20万円程度の報酬をもらっていた。「財務局との折衝でうまく利用された感がある。煮え湯を飲まされた」「重要な情報を知らされないまま、ただ利用された」などと語ったが、後悔先に立たず。役員としての監視監督義務を問われた。

エーアイトラストが公表していた「役員の異動に関するお知らせ」
写真はエーアイトラストが公表していた「役員の異動に関するお知らせ」。官僚OB取締役の登用を積極的にアピールしていた。 2018年ごろは従業員15~16人に対し役員が10人もいたと社長が証言している(記者撮影、編集部が一部黒塗り加工)

投資家の金が流れた先

証券取引等監視委員会の調査では、エーアイが投資家から集めた金の少なくとも15.8億円は、山本幸雄役員(当時)が実質支配する会社に流れていた。賠償責任は山本氏も負うが音信不通の状態だ。訴訟では認否を含め主張をいっさいしなかった。山本氏の代理人弁護士は訴訟終盤に辞任した。

問題となった融資先をエーアイに紹介したのは、金融ブローカーだった山本氏だ。過去には、持ちもしない光ファイバー事業の営業権を譲るとして上場企業から譲渡金や融資金を詐取したことで訴えられ、2009年に9.7億円の支払いを命じられている。

エーアイの松本卓也社長は、上場企業I社の創業者社長(当時)から山本氏を紹介されたと証言。山本氏が過去に起こした事件は「認識していた」という。なぜそのような人物の紹介案件に融資したのか。尋問の際に太田弁護士が問うたところ、「この人に貸すわけではないから」と述べた。

訴訟ではエーアイが投資家から集めた金の流出先がより詳しく見えてきた。その中には松本社長の関連会社もあった。太田弁護士らの尽力がなければ、わからなかった事実だ。

流出先には「紙屋道雄」なる人物の名前もあった。2004年に上場企業の架空増資に協力したとして逮捕。2021年には無登録で暗号資産を販売したとして逮捕・起訴されている。

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