スカイマーク退任会長が明かす「失敗の本質」 井手会長に聞く、スカイ17年の軌跡<後編>

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年が明け、資金不足は深刻になる。1月13日にはスカイマークが申し入れた整備部品の売却をANAが断り、実施的に支援をしないと通告。この時点で単独での再建の道を選ぶことになる。そこに現れたのが、今回スカイマークに過半の出資をすることになった投資ファンドのインテグラルだ。

「多くのファンドに支援を仰いできたが、どこもA330を維持して事業を続けてほしい、東証1部の上場を維持してほしいという前提だった。つまり、あくまで他社とのコードシェアありきだった。

インテグラルは、A330もA380も切って法的手続きをするというわれわれの考え方に賛成してくれた唯一のファンドだった。黒字化にこぎ着けるには、それが一番早い方法だった」

「独立の維持」が最重要課題

最終的にインテグラル、ANA、三井住友銀行、日本政策投資銀行がスポンサーとなり、8月5日の債権者集会でスカイマークの再生計画案が可決された。9月29日に臨時株主総会が開かれ、インテグラルの佐山展生代表が会長に、政投銀出身の市江正彦氏が社長に就任する。

(撮影:大澤誠)

「7月からは単月黒字になっている。8月、9月も順調だ。このまま行けば、5年を待たずして早期に再上場を果たせる会社になると思う。ANAに譲ってもらい、独立性と雇用の維持を約束してもらった。非常に感謝している。

この半年はいろいろあったが、基本的にはスカイマークのブランドがそのまま残る。やっと責任が果たせたという思いだ。当然、債権者の皆さんにはご迷惑をおかけしているので、これからのビジネスでお返ししていく。

インテグラルの佐山代表とは、破綻から今まで、合宿みたいにして話し合ってきた。互いにグイグイと正面突破するタイプで、双方の役員からは『2人はよく似ている』と言われる。考えることは一緒で、独立を維持して、日本の航空業界の正当な競争環境を維持するための役割を継続していってほしいと思う。こだわるのは、やはり独立性。

インテグラルはファンドとして利益を出さなければならないので、エグジット(出口)がある。それに際しては、きちんとスカイマークの生え抜きの経営陣と協議して決める。もちろんANAとは株主間契約で話さなければならないが、すべてをANAに売るということはありえない。

ANAの持分法適用会社、あるいは子会社になったとすれば、独立性はなくなる。これはANAの経営陣も公約しているので、ちゃんと守ってもらえると考えている。インテグラルの株の売り先は重要で、再上場時に市場で流すのか、ほかの投資家とスワップするのか。独立の維持という意味では、今後これが一番重要な課題になっていく」

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