スカイマーク退任会長が明かす「失敗の本質」 井手会長に聞く、スカイ17年の軌跡<後編>

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(撮影:大澤誠)

「現在、羽田では36の発着枠を持っているが、国交省はこれ以上国内線の枠は増やさず、増枠分は国際線に振り向けるという方針だ。ということは、国内線で生き残るには幹線で座席を増やし、収益を上げていくしかない。

そこで、より大きな機材を入れてキャパシティを増やそうと決めた。たまたまA330を安価にリースできるという話が来たので、それを幹線だけに入れることにした。10機入れれば、B737の時に比べて座席数が6割増しになる計算だった。

すべてエコノミーにすれば、B737と比べて2倍の座席数が取れるが、ゆったりとしたシートで運賃が安くて品質のいいものを提供しようとした。十分にマーケットを引きつけることができると考えた。

万一うまくいかなくても、この機材であればハワイに飛ばせるので国際線にも使える。国内外両方に展開できるので、リースであればやろうという話になった」

われわれは思い上がっていた

A380の導入を決めたのが2010年、A330は2012年だった。しかし、予想外の円安が一連の計画に狂いを生じさせた。2012年末の安倍政権発足後、急激に円安が進行し、ドル建て払いが膨らんだ。

「最近落ち着いて考えるようになって気づいたことだが、利益率が高かった頃は逆に円高の恩恵が大きかったのに、自分たちで錯覚していた部分もあった。われわれのビジネスモデルで利益が上がっていたのだと。本来ドル払いが多いので、円高にすごく助けられていた。

リーマンショック後にJALが破綻し、ANAも大赤字。そんな時に、スカイマークは独り勝ち状態だった。われわれは思い上がっていた。正直なところ、2009~2011年の頃はANAの背中が見えたとも思った。JALと合併前のJASほどの規模になりつつあったし、国際線に進出したら一気に叩けると感じた。

しかし、円高によって利益が上がっていたのだとすれば、3年も先のことに手を出すのではなく、そのときに機材を買って飛ばすべきだった。キャッシュフローもあったわけだから、1機でもいい、A380の導入が完了していれば問題はなかった」

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