45歳で死を望んだ彼女が迎えた「安楽死の瞬間」 その時、医療介助死を支えた医師が感じたこと
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(写真: ks__1984/PIXTA)
高齢化が進むなかで「安楽死」が頻繁に話題にあがるようになりました。2016年に安楽死を合法化したカナダでは、細かく法改正をしながら現在総死亡者数の3%前後の人が安楽死を選択しているそうです。
「死」を自分で選ぶ時代になった今、安楽死を選ぶ人はどんな思いで選択し、見送る家族や医師はどう受け止めているのか。法律の解釈はどう変遷していったのか――。『安楽死の医師』より一部を抜粋・編集してお届けします。
安楽死の同意は最期の瞬間も行う
ドアが開いて看護師のユーリが到着した。窓の外を見ると、すでに霊柩車と葬儀会社の担当者が待機していた。
わたしはヨランダに身を寄せて、準備ができたと耳元でささやいた。彼女は「みんなキッチンに集まってちょうだい」と呼びかけた。医療介助死(MAiD:Medical assistance in Dying)の瞬間を見るのだけは辛いと言っていた友人には、「2階に上がっていてね」と声をかけてハグをした。それから全員とハグをした。
リビングルームの隅にあるベルベットの肘掛け椅子に腰を下ろし、足をオットマンに乗せると、正面の窓から外の通りと夏の木々を眺めた。「最期の言葉を聞いて」と彼女は言った。
「すごく愛と安らぎを感じる。自分の決断が正しいという確信を、こんなに強く持てたのははじめて」
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