名門・太平洋ゴルフの民事再生、実質的な親会社不在の“身売り”に会員からは反発の声
提携発表に先立つ06年12月には、太平洋ホールディングス合同会社なる親会社を別途設立。ここに東急不動産とエヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズが39%ずつ出資をし、田村町興産から保有株を取得。東急不動産は子会社の東急リゾートサービスの長谷川勤常務を太平洋クラブの代表取締役会長職に送り込む。
ここまでは開示情報や報道を注意して見ていれば誰でも気づくのだが、実はこのとき、三井住友銀行が太平洋クラブに対して持っていた推定約650億円の貸付債権も、三井住友銀からあおぞら銀行などに付け替えられたらしいのだが、その点は一切公表されず、会員も知るすべはなかった。
提携の中身自体、資材の共同購入や互いのコースの相互利用など、どうということのない中味だったため、「この程度の提携のために東急に代取会長ポストを提供したということは、近い将来東急に買収されるのでは」「もう買収されたということなのでは」との憶測が業界内に流れたのは事実だ。
もっとも、この当時のエヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズは大和証券と三井住友銀グループの合弁会社だったので、この親会社設立をもって三井住友銀の撤退と判断するには材料不足だったことは間違いない。長谷川氏が会長で入ってきても、住銀出身の次郎丸清志社長はポストを追われていない。
三井住友銀が名実ともに太平洋クラブと完全に縁が切れるのは、東急との提携発表から2年半後の09年9月。大和証券グループが三井住友銀グループを離脱したときである。
太平洋クラブの株式を持つエヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズは、大和証券グループ側の会社になったため、ここで完全に三井住友銀との縁が切れたのだ。
この時点で太平洋クラブの社長を務めていたのは、旧住友銀出身の半田次義氏。三井住友銀との縁切りのタイミングでは、半田氏も含め、幹部人事に特に動きはなく、業界も会員も気づくすべはなかった。