《プロに聞く!人事労務Q&A》退職金算定において、育児介護休業期間を勤続期間に算入しないことは可能ですか?

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《プロに聞く!人事労務Q&A》退職金算定において、育児介護休業期間を勤続期間に算入しないことは可能ですか?

質問

退職金の算定についての質問です。現在、弊社の規定では、「育児介護休業期間中も勤務したものと見なして退職金計算する」となっています。しかし、経費削減のために、育児介護休業期間を退職金算定の際の勤続期間へ算入しないことにしたいと思います。こうした変更は可能でしょうか。もし、可能な場合、変更手続きをするに当たって注意すべきことはありますか。(小売業Y社:人事担当)

回答
回答者:石澤経営労務管理事務所 石澤清貴

この問題は、【1】育児・介護休業法(略称)上の取扱い、【2】労働契約法に基づく不利益変更という2つの点から検討しなければなりません。

まず、育児・介護休業法上に基づく取り扱いとしては、育児・介護休業や子の看護休暇・介護休暇を取得した日を無給とすること、所定労働時間の短縮措置により短縮した時間相当分を減給すること、あるいは退職金や賞与の算定に当たり、現に勤務した日数を考慮する場合に休業をした期間を日割で算定対象期間から控除することなどは、不利益取り扱いに該当せず法に抵触しません。

しかしながら、休業期間を超えて働かなかったものとして取り扱うことは、「不利益な取扱い」に該当し育児・介護休業法(第10条、第16条及び第16条の4)に抵触することとなり禁止されています。この点からすれば、貴社が検討している内容は問題ないと言えます。

ところが、貴社の現行規定においては、「育児休業期間中も勤務したものとして退職金計算する」となっています。これを、「育児休業期間中については、その期間につき、退職金の算定の基礎となる勤続期間に算入しない」と改定することは、労働者にとっては、労働契約上の労働条件について不利益に変更されることになります。このような就業規則等の変更による労働条件の不利益変更については、労働契約法上の問題が生じます。

労働契約法第9条では「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」とし、かつ、第10条では「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」と定めています。

したがって、必ずしも、変更できないものではないですが、変更に当たっては、変更の合理性について、【1】労働者が被る不利益の程度、【2】使用者側の変更の必要性、【3】相当性 ( 内容自体、代償措置、一般的状況 )、【4】労働組合がある場合には労働組合又は従業員過半数代表等との交渉の経緯、【5】その他の就業規則の変更に係る事情、等が問われます。

したがって、変更するに当たっては、会社の経営状況等を十分に従業員に説明するとともに、現在、既に育児・介護休業期間中の者がいる場合にはその者については除外し今後対象者が発生した場合とするとか、または一定の猶予措置又は緩和措置として、段階的な減額措置を講じ、その後対象期間について不支給とするなどを検討し、労働者との合意を形成する必要があります。
(石澤経営労務管理事務所 特定社会保険労務士 石澤 清貴)

 

石澤清貴(いしざわ・きよたか)
東京都社会保険労務士会所属。法政大学法学部法律学科卒。日本法令(人事・労務系法律出版社)を経て石澤経営労務管理事務所を開設。 商工会議所年金教育センター専門委員。東京都福祉サービス第三者評価者。特に労務問題、社内諸規定の整備、人事・賃金制度の構築等に特化して業務を行う。労務問題に関するトラブル解決セミナーなどでの講演や執筆多数。


(東洋経済HRオンライン編集部)

 

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