安保法案成立、湾岸戦争以来の宿題が片付く  安倍首相の手法には批判の声も

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「湾岸戦争からずっと抱えてきた宿題がこれで片付く」──法案の成立について、自衛隊幹部はこう話す。

ペルシャ湾で掃海活動をした1991年の湾岸戦争以来、日本は自衛隊の役割拡大と憲法の狭間で揺れてきた。93─94年の朝鮮半島危機を受け、米軍の後方支援を可能にする周辺事態法を制定。2001年の米同時多発攻撃では、特別措置法を作ってインド洋に補給艦を派遣した。

法案が成立したことで、日本と密接な他国が攻撃された場合でも、自衛隊が反撃できる集団的自衛権の行使が可能になる。他国軍の後方支援に特措法は必要なくなり、対象が米軍以外にも拡大、活動範囲や内容も広がる。国連以外の平和維持活動にも参加が可能となり、武器の使用基準が緩和される。

「20年間少しずつ、たとえばPKO(平和維持活動)法や周辺事態法、有事法制を作っていく中で積み上げていった」と、小野寺五典・前防衛相は言う。「一部であっても集団的自衛権の行使容認、海外で自衛隊員が任務を遂行するための武器使用。今までとても超えられなかっただろうと思う大きな壁について、今回は乗り越えた」と話す。

権力の使い方に批判

だが、壁の越え方には批判の声が広がっている。連日の国会周辺のデモでは、抗議の矛先が法案そのものだけでなく、安倍首相の政治手法にも向かった。

昨年7月、政府は集団的自衛権の行使はできないとしてきた歴代政権の憲法解釈を見直した。その半年前に国会で憲法解釈について質問された安倍首相は「先ほど来、(内閣)法制局長官の答弁を求めていますが、最高の責任者は私です」と述べ、首相が自由に解釈を変えられると取られかねない発言をした。

国会に参考人として呼ばれた憲法学者や、公聴会に公述人として呼ばれた最高裁の元判事の違憲表明にも耳を貸さなかった。「法的安定性は関係ない」と発言した礒崎陽輔首相補佐官、米軍幹部に法案成立時期の見通しを語ったとされる河野克俊統合幕僚長の問題は、うやむやのままだ。

慶應義塾大学の添谷芳秀教授は、集団的自衛権の行使容認は必要と指摘する一方、「今回の変化を合憲と主張するのは大問題だ」と言う。「首相の権力の使い方は少し権威主義的過ぎる。党内の反対意見まで威圧し、そのやり方は非民主的だ」と話す。

安保法制は半年以内に施行される見通し。南スーダンに派遣中のPKO部隊に、他国部隊や国連職員を助ける駆け付け警護の任務が追加される可能性がある。

 

(久保信博 取材協力:リンダ・シーグ 編集:田巻一彦※)

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