バカリズム「ホットスポット」早くも"怪作の予感" 前作「ブラッシュアップライフ」との共通点も
その背景には、さまざまな職業の登場人物のさりげない会話シーンに映されるように、リアルを追求するための綿密な取材と、バカリズムの人への観察眼が確固とした芯になっていることがある。
そして、もうひとつ重要なポイントになっているのが、会話劇が生み出す笑いの“軽さ”だ。くすっとする程度のライトな笑いが、ストーリーの流れを邪魔せず、物語の本筋から視聴者を離れさせない。
日本を代表する脚本家・坂元裕二氏のシュールで尖った会話劇は、そこから笑いも悲哀も怒りも感動も生み出す。一方でバカリズムの脚本は、会話になじんだボケとツッコミのおもしろさで、坂元裕二氏の会話劇と同じぐらい極めて高い完成度を誇る。
さらに笑いの部分では、プロの技巧で、より奥行きがありつつ、くすっとする笑いから爆笑まで、その笑いを調整する練度を極めていることが感じられる。
2話以降はどうなるのか?
『ホットスポット』第1話は、この先への期待を大いに膨らませる十分なおもしろさがあった。では、第2話以降はどうなっていくか。それも考察してみよう。
『ブラッシュアップライフ』は、中盤からストーリーの視点が一転した。ただ何度も人生を繰り返していた主人公は、生き直しのベテランの友人との出会いから、飛行機事故で失われるはずの多くの人の命を救うために、運命を変えようと生きるようになる。それまでの明るく楽しめる脳天気一辺倒のドラマではなく、壮大なサスペンスになった。
とはいえ、物語のすべてがシリアスにシフトされるのではない。その要素が根底にありながらも、表面的にはバカリズムらしいコメディがあり、笑って楽しめて泣ける、手に汗握るラストへつなげた。
職業あるある的なやりとりや、さりげないボケとツッコミの会話劇にヒューマンドラマを混ぜ込む、明るいコメディからの暗転となるシリアスへのストーリーの転調。シリアスとコメディが絶妙に融合するなか、怒涛の笑いと涙のラストが待ち構える。そんなバカリズムメソッドとも呼べるであろう、独自のドラマ構成の脚本術が、本作にも反映されていることが期待される。
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