「死ぬのが楽しみに」ふるさと難民が森で得た希望 岩手「いのちを還す森」 埋葬予定の森を手入れ

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語り合う人たち
世代や仕事、居住地が異なっていても森や死生観について語らえるという(写真:筆者撮影)
今井さんの祖父母を埋葬するため森の中へ
今井さんの祖父母を埋葬するため森の中へ(写真:ハヤチネンダ)

墓苑の経営は宗教法人以外では難しいことから、駒形神社と協業し、神社が事業主体となる形で許可を取得。埋葬を希望する会員が亡くなった後は、駒形神社が神葬式を行った後に、関係者らが山林の表土を掘り、パウダー状に粉砕した遺骨を土壌と混ぜたうえで土に戻す。

疲弊する過疎地に人を呼び込む可能性

現状、「いのちを還す森」は1.7haで、4000人前後の遺骨は埋葬できるが、森のある荒川集落は人口減少と過疎化が進み、所有者が手放したいと望む山林は多く、すでに提供を希望する声も上がっているという。

今井さんは「続ければ続けるほど育つ事業で、過疎化が進む地方に人と資金を呼び込み、貢献できる可能性がある」と手応えを感じている。

理念に共感した人たちとともに手入れをした森に「還る」ことをコンセプトとしたこの事業は、森入リを目的に定期的に遠野に通う「関係人口」を創出する取り組みでもある。

参加者が増えれば、宿泊や現地での輸送、お土産品の購入といった経済効果やシニア世代の移住などにつながる可能性もある。

還暦を迎え、「来し方行く末(過去と未来)」に思いを馳(は)せることが増えたという赤池さん。

「都市部で生きる私たちはいわば『ふるさと難民』。遠野の森と関係性を築いてきたことが、生きている自分にとっての心のよりどころになっているのです」

【写真】「いのちを還す森」の活動に密着した(12枚)
手塚 さや香 岩手在住ライター

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てづか さやか / Sayaka Tezuka

さいたま市出身。毎日新聞の記者として盛岡支局や学芸部で取材経験を積んだ後、東日本大震災からの復興の現場で働くため、岩手県釜石市に移住。復興支援員として活動し、2021年にフリーランスとして独立。一次産業や地方移住の分野を中心に取材・執筆しているほか、キャリアコンサルティングや地域おこし協力隊の支援活動も行っている。

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