トランプ発言で注目「カナダ」の日本との"深い縁" キャノーラ油の品種改良の背景に"両国の信頼"
特に、中西部のマニトバ州、サスカチュワン州、アルバータ州において、小麦、大麦と並ぶ新たな作物として、菜種の導入を検討する。
ところが菜種は、悪玉コレステロールを上昇させないオレイン酸を多く含む一方、エルカ酸とグルコシノレートを含み、動物実験の結果、心疾患をもたらす危険性が指摘されていた。
そこで、カナダの穀物専門家・科学者は、菜種の本格的な品種改良に取り組む。めざしたのは、エルカ酸もグルコシノレートも削減する「ダブル・ロー」。
実は、カナダにおける菜種の品種改良には、日本も深く関わっている。
江戸時代以降、国産の菜種油は天ぷらを筆頭に、料理に広く使われていた。菜種は、コメを収穫した後の二毛作の絶好の品目として栽培されていた。しかし、稲作事情の変化で、田植えが梅雨の時期から5月、さらには4月と前倒しされ、かつ減反政策で、稲作自体が縮小。菜種を輸入せざるを得ない状況に直面した。
しかも、菜種をめぐる健康と安全の問題は、日本でも同じであった。ゆえに、日本植物油協会は、代表団を何度もカナダに派遣し、「ダブル・ロー」品種改良の促進を訴え、責任を持って輸入する旨を約束した。
カナダにとっては、安定した需要先が確保されていることで、先行きが完全には見通せない革新的な品種改良に腰を据えて取り組めたのだ。両国間の信頼の原点がここにある。
その甲斐もあって、最初の成果は、1974年マニトバ大学のキース・ドーニー博士とバルダー・ステファンソン博士の共同研究により、エルカ酸含有量を5%を下回るまで削減。
一方、1977年にはWHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の合同委員会がエルカ酸過剰摂取に関する警告を発出する。食の安全確保こそが品種改良の鍵だ。
1978年「キャノーラ」が誕生
そして、1978年、西部カナダ植物油協会は、ダブル・ローをめざし品種改良されてきた新たな菜種は、従来品種とは完全に異なることを広くアピールするために、新品種の菜種を「キャノーラ」と命名する。
品種改良は倦(う)むことなく継続され、80年代になると、エルカ酸2%未満、グルコシノレート30ppm未満のキャノーラが普及。1985年には、アメリカ食品医薬局(FDA)のGRAS(一般的に安全と見なされる食品)に登録された。
これをきっかけに、オーストラリアやヨーロッパでも生産は増え、キャノーラ油のマーケットも拡大し、今日に至る。
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