原生林由来のバイオマス燃料、輸入国日本の責任 森林生態学の専門家がビジネスの危うさを指摘

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森林生態学者のレイチェル・ホルト氏。カナダの原生林の危機について警鐘を鳴らしている(撮影:今井康一)
バイオマス発電は、燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量をカウントしなくてよい再生可能エネルギーとされている。日本では2012年にスタートした再エネ固定価格買取制度(FIT制度)によって導入が進み、FIT制度および後続のFIP(フィードインプレミアム)に基づく導入容量は2023年度に約463万キロワットに達している。
その中身は輸入バイオマスを中心とした一般木材や液体燃料などが8割近くを占め、林地残材など国内の未利用木質バイオマスを主体とした未利用材は1割程度にとどまる。そしてベトナムやカナダ産の木質ペレットが輸入バイオマス燃料の主柱となっている。
しかし、カナダでの木質ペレットの生産の実態について、専門家は「カーボンニュートラルとはほど遠く、森林生態系に悪影響を与えている」と指摘する。森林生態学者で独立コンサルタントのレイチェル・ホルト博士に、カナダの現状と日本との関係について聞いた。

――ホルトさんは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州での原生林皆伐と、日本のバイオマス発電の関係を問題視しています。

カナダ西部のブリティッシュコロンビア州は、カナダでもとりわけ林業が盛んな地域です。同州では原生林を片っ端から切り倒す「皆伐」が行われ、得られた木材を住宅用建材などとしてアメリカや中国、日本などに輸出しています。

また、製材所で発生したおがくずなど(原材料全体の約8割)に加え、丸太の一部(原材料の約15~20%)が木質ペレットというバイオマス発電用燃料に加工され、日本や韓国、イギリスなどに輸出されています。

原生林由来の森林を伐採し、その一部をペレットに加工して長距離輸送し、発電に利用することは、実態としてはカーボンニュートラルとは言えません。石炭を燃やすのと同じように短期的には地球温暖化を促進します。

輸送でもCO2排出、発電効率も悪い

――どういうことでしょうか?

製材所で発生したおがくずをペレットに加工し、地元地域で暖房用燃料として使うのであれば、廃棄物や資源の活用方法としては良い方法だと言えます。

他方、日本で使用するとなると、海上を含めた長距離輸送が必要となり、輸送時に大量の二酸化炭素(CO2)が発生します。加えて発電用の場合、熱利用と比べて非常に効率が悪く、エネルギー効率は20~30%程度にしかならない。そのため、木質ペレットのようなバイオマスをグローバル市場において発電用として利用することは良い利用方法とは言えません。

――この問題を深く理解するためにも、ブリティッシュコロンビア州の森林の現状についてご説明ください。

ブリティッシュコロンビア州の面積は日本の2.5倍もあり、そのうち約半分が森林で覆われています。ブリティッシュコロンビア州での林業のやり方は、そのほとんどが原生林の皆伐によるものです。

伐採した後には植林が行われますが、ブリティッシュコロンビア州で成熟した森林になるには、平均で80年かかります。原生林を伐採すると、失われた炭素貯留や生物多様性の価値を取り戻すには少なくとも数百年を要します。

次ページブリティッシュコロンビア州の森林はどれだけ疲弊しているのか?
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