田沼意次を重用「徳川家治」どんな人物だったのか 大河ドラマ「べらぼう」での描かれ方にも注目

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それに比べると、家治はそつなく育てられすぎたのかもしれない。原動力となる挫折やコンプレックスがなかったため、いまいち伸び悩んでしまったのではないだろうか。

だが、そんな家治だからこそ、温厚で真っ直ぐな性格に育ったともいえる。『徳川実紀』によれば、武家屋敷や町屋が焼失したときに、側近たちが興味本位で見に行こうとするのを、家治はこう言ってとがめたという。

「火災は民の憂いの大きなもの。民の憂いは私の憂いである。決して興のあることだと思ってはならぬ」

その後、家治は自ら防火の指揮をとった。前述した逸話と同様に、どうもできすぎた話だ。それでも、温厚な人柄を裏づける逸話として広まった背景を踏まえれば、家治は少なくとも横暴な将軍ではなかったのではないだろうか。

家治は、強いリーダーシップは持ちえなかった。だが、それと同時に、権力者として暴走することもなく、優秀な側近に政務を任せ続けた。そんな家治の治世で、側近として政務を任されて、改革手腕を発揮したのが、田沼意次である。

「べらぼう」で家治はどう描かれるのか?

大河ドラマ『べらぼう』の初回放送では、渡辺謙が演じる田沼意次が、横浜流星演じる蔦屋重三郎に「お前は何かしているのか? 客を呼ぶ工夫を」と問いかけて、重三郎がはっとするシーンがあった。

アイデアあふれる田沼意次に経済改革を任せた家治は、ドラマでどのような人物として描かれるのか。意次との関係性の描写とともに注目しつつ、今後の放送を楽しみたい。

【参考文献】
鈴木俊幸『蔦屋重三郎』 (平凡社新書)
鈴木俊幸監修『蔦屋重三郎 時代を変えた江戸の本屋』(平凡社)
倉本初夫『探訪・蔦屋重三郎 天明文化をリードした出版人』(れんが書房新社)
後藤一朗『田沼意次 その虚実』(清水書院)
藤田覚『田沼意次 御不審を蒙ること、身に覚えなし』(ミネルヴァ書房)
真山知幸『なにかと人間くさい徳川将軍』(彩図社)

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は 『偉人メシ伝』 『あの偉人は、人生の壁をどう乗り越えてきたのか』 『日本史の13人の怖いお母さん』『逃げまくった文豪たち 嫌なことがあったら逃げたらいいよ』(実務教育出版)。「東洋経済オンラインアワード2021」でニューウェーブ賞を受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/
 

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