ゴルフを「始めさせたい」面々に問われる本気 危機感を行動に移せているか

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リクルートライフスタイル社が昨年8月に始めた「ゴルマジ!20~GOLF MAGIC~」も、若者層がゴルフを始めるきっかけをつくっている。「大人」の仲間入りした20歳限定で全国300近い練習場やゴルフ場の利用料金を無料にする企画で、1期目では会員登録(無料)が9000人を超え、80%以上がゴルフ継続を希望しているという。現在は利用施設が増え、2期目に入っている。そのほかでも「大人世代」にゴルフを始めてもらおうという企画は、メーカーなども企画してきている。

ゴルフパートナーやリクルートライフスタイルに共通するのは、「損して得(徳)取れ」の発想なのだろう。それぞれの企画で大きな「損」をしたワケではないだろうが、ゴルフクラブ3万本は多分バカにならない金額。9000人をただでプレーさせるのもゴルフ場や練習場には勇気が必要になる。

それが大きな「得」になるかどうかは未知数だが、そんなビジネスでは基本とされる発想に至らなくなっている今のゴルフ業界のムード。まだ業界を横断するような取り組みにはなっていないが、変えようという動きではある。

将来だけでなく、「今どうするか」の問題解決も必要

ジュニアゴルフでは「ザ・ファースト・ティー運動」という“子供たちに、ゴルフを通じて人生に必要な能力や人生の価値を教える米国発祥のプログラム”が日本でも稼動してきていることは、一度紹介した。ただ、子供たちが大人になり、ゴルフ場やゴルフ練習場に自分のおカネで足を運び、クラブなどの道具を買うという年齢に達するまで時間がかかる。「それまでには日本のゴルフはなくなっているんじゃないか」というゴルフ業界から聞こえる声も、あながちブラックジョークではすまないかもしれない。

「大人」になると、費用、時間、体裁……などが気になって、なかなか新しいものに入っていけなくなる。ただ、ゴルフ市場活性化委員会で「20代後半」がターゲットだとしているように、大人の世代にゴルフを始めてもらわなければ、今のシニア、将来のジュニアの間を埋めていけなくなる。「ジュニア育成」にはプロゴルフの各協会などが力を入れているが、これはかなり先の将来を見据えてのこと。「今どうするの」という問題は解決しない。並行して20~40代の「大人育成」も必要になってくる。

大人はとかく「損得勘定」を気にすることが多いのだから、大人世代獲得にはまずは「得した」と思ってもらうことが、ゴルフを始めて好きになってもらう要素の1つになりそうな気がする。

日本プロゴルフ協会の倉本昌弘会長が「ゴルフ市場再活性化に向けた新たな提案」を発表したのが3月。それによると「ゴルフをやってみたい」という潜在層は約2000万人いるとし、年間50万人、10年後に500万人の新規ゴルファー創出を描いている。半年経って、ゴルフ業界に「危機感」は生まれているようだが、行動になっているのは少ない。早く潜在層に訴えかけなければ、その層も「潜在」ですらなくなってしまう。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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