自身もアレルギー患者で父を蜂アレルギーで亡くしている医療人類学者の著者が、5年以上かけて調査・執筆したテリーサ・マクフェイル『アレルギー:私たちの体は世界の激変についていけない』の日本語訳が刊行された。花粉症や喘息、アトピーなどのアレルギーと闘う医療関係者や患者に取材を重ね、アレルギーの全貌に迫る「アレルギー大全」とも言うべき書だ。
「『アレルギー』は大事な一冊だと思います。今の時勢からも、やはりちゃんと読んで理解しておかなければいけません」と語る東京大学大学院農学生命科学研究科の村田幸久准教授は、人間と動物のアレルギーのメカニズムや予防・治療法を研究する中で、現在のアレルギーをめぐる課題についてどう考えているのか。前編に引き続きお届けする。
現代社会は化学物質まみれ
現代人にとって「きれい」という言葉は、絶対的な善を意味します。「きれい」を求め、さまざまな工夫が凝らされています。
例えば今私たちが話しているこの部屋の壁や天井には、カビ1つ生えていません。腐らず、匂わず、べとつかず、カビず、これらはすべて菌が増えないようあらゆる工夫が凝らされているからこそ実現しています。皆さん自身が普段これらの事実を意識することはないと思いますが。
腐りにくい加工食品、生乾きを防ぐ洗剤、カビの生えない壁の材料やコーティング、汗をかいても匂わない消臭剤やスプレーなど、これらの商品や技術は、食品に関しては食中毒のリスクを減らすなど、私たちの生活に多くのメリットを提供してくれることに違いありません。
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