花粉症、喘息、アトピー、食物アレルギーなど、2030年には2人に1人が患者になると言われている「アレルギー」。まったく症状はないと思っていたのに、大人になってから突然発症する人も増えている。元ジャーナリストで医療人類学者であるテリーサ・マクフェイル氏もその1人で、40代になって頭痛と喉の痛みで受診すると「アレルギー」と医師に言われたという。それをきっかけにアレルギーについて調べ始めると驚くべき実態が次々と明らかになった。マクフェイル氏がアレルギーの専門家や患者たちを5年以上取材して書き上げた『アレルギー:私たちの体は世界の激変についていけない』について、訳者の坪子理美氏が本書の読みどころとアレルギーの実態を紹介する。
頭痛と喉の痛みの原因がアレルギー?
2015年。医療人類学者として大学教員の職に就き、講義、研究、執筆に奮闘していた40代のテリーサ・マクフェイル氏は、突如として猛烈な体調不良に襲われた。1年足らずのうちに4回も細菌感染症にかかり、主治医から耳鼻咽喉科の専門医のもとへと送られた彼女は、医師からこんな言葉を聞かされる。
「ただの感染症で起こるような炎症よりも、はるかにひどいですね。アレルギーをお持ちなんだと思います」
アレルギーという医師の見立ては、マクフェイル氏にとってまったく意外だったという。当時、彼女が抱えていた症状は頭と喉の痛み。激しいくしゃみや鼻水に苦しめられたこともなければ、目の腫れや痒みにも、肌の赤みや湿疹にも、吐き気や腹痛にも襲われたことはなかった。
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