小さな子供にシャワーを浴びさせた後、バスタオルでポンポンと体を拭いてやり、肌に保湿ローションを塗る——出産時に病院で教わった「湯上がりの保湿」だ。子供の誕生以来、夫婦で1年以上続けてきた習慣だが、ここへきてふと筆者の頭に疑問が浮かんだ。
ベビーパウダーから保湿ローションの時代へ
自分が子供の頃は、湯上がりにはベビーパウダーをはたいて肌を乾燥させていたのではなかったか?
脱衣所に置かれたベビーパウダーの丸い缶に、ふかふかとした白やピンクのかわいらしいパフ。独特の甘い香りや粉のさらりとした感触の思い出とともに、30年以上前の光景がありありと蘇ってくる。
江戸時代から乳児のあせも対策として使われてきた天瓜粉(てんかふん。天花粉とも)は、夏の季語。キカラスウリの根のデンプンを細かい粉にしたものだ。
また、日本初のベビーパウダーは、日本の小児医学の草分けとなった弘田長(ひろた・つかさ)氏と薬学者の丹波敬三氏が共同で開発した。明治期の1906年に和光堂薬局から発売され、商品名のシッカロールはベビーパウダーの代名詞となった。夏のあせも予防だけでなく、布おむつの蒸れによる肌荒れ(おむつかぶれ)の予防としても、季節を問わず使われてきた。
そんな日本の赤ちゃんのスキンケアが「保湿重視」の方向に切り替わったのは、ここ10年ほどのことのようだ。
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