1960年代に経験した初めてのアルバイト先は、布おむつの洗濯・配送サービス会社だったというシュライマー氏。現代の私たちは、プラスチック素材を使ったおむつを赤ちゃんのお尻に当て、その素材によるかぶれを防ぐために保湿クリームを塗ることで、子供をますます刺激物に曝露させているかもしれないという。保湿剤の成分や使用法についても、今後の研究を通じてよりよい指針が示されるようになるかもしれない。
離乳食「できるだけ先送り」から「早めに少しずつ」へ
さて、近年、赤ちゃんのアレルギー予防に関して生じたもう一つの大きな変化が、離乳食の進め方だ。
1980年代終盤から1990年代初頭にかけて、米国小児科学会は妊娠中の母親、授乳中の母親、そしてアレルギーのリスクのある子供に対し、ピーナッツなどの食材を4歳まで避けること(予防的除去)を勧告していた。
ところが予想に反し、この勧告はかえって食物アレルギーを増加させていった。後にわかってきたのは、適切なタイミングで口からの食材摂取を始めることの重要性だ。
近年、食物アレルギーの発症については、先述の上皮バリア仮説と関連した「二重抗原曝露仮説」が有力視されている。まだ口にしたことのない食物の成分が皮膚を通じて体内に入り込むと、その物質が「敵」として体に記憶されてしまい、その食物を初めて口から摂取したときにアレルギーを引き起こすというものだ。
興味深いことに、そうなる前に食物を適切なタイミングで口から摂取しておけば、むしろアレルギーは起きにくくなるという。
イギリスとアメリカの研究チームによって実施され、2015年に医学論文誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)』に論文が掲載された「LEAP(Learning Early About Peanuts Allergy:ピーナッツアレルギーについて早期に知る)Study」は、乳児期からの食物アレルギー予防における方針転換を促す大きなきっかけとなった。
この研究は、参加に同意した家庭の乳児を無作為に2つのグループに分けて行われた。片方のグループには5歳になるまでピーナッツを与えず、もう片方のグループには1歳未満のうちからピーナッツを含む食品を食べさせた。
すると、5歳0カ月時点でのピーナッツアレルギー有病率は、ピーナッツを避けてきた群では13.7%となったのに対し、ピーナッツ摂食群ではたったの1.9%だった。
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