2020年のパナソニックの調査によれば、花粉症の社会人が仕事のパフォーマンス低下を感じる時間は1日につき平均で約2.8時間。同社の推計では、花粉症によるパフォーマンス低下がもたらす労働力低下の経済損失は、なんと1日あたりで2,000億円超に相当するという(パナソニック「社会人の花粉に関する実態調査」)。
世界全体での抗アレルギー薬の市場規模はいまや年間300億ドルに迫り、アレルギー検査と治療を合わせた販売額は、2026年までに500億ドルを超えると予測されている。
また、重篤な食物アレルギー患者にとっては生命線ともいえるアレルゲンフリー(アレルギーの引き金となる成分の含有量がゼロに近い)食品の市場規模は、2030年までに年間1兆80億ドルに達すると見込まれている。アレルギーは大きな損失をもたらすものであると同時に、大きな市場を支えるものともなっているのだ。
職業病・生活習慣病としてのアレルギー
英語圏の農業従事者の間では、俗称で「農夫肺」といわれる病気が古くから知られていた。カナダ労働安全衛生センター、オーストラリア農業従事者衛生センターなどの説明によれば、農夫肺は腐敗した干し草などの粉塵を繰り返し吸い込むことで、繁殖していたカビの胞子や細菌に対するアレルギーが起こるもの。
悪寒、発熱、咳、胸の締めつけ感、倦怠感が生じる。現在では外因性アレルギー性肺胞炎と呼ばれる疾患の一種である。
農夫肺らしき事例の記載が初めて行われたのは1713年のことで、20世紀前半には次々と症例が報告されるようになった。それに加え、カエデの樹皮やコルクの加工業者、ハトの飼育者、鳥の羽毛の加工業者など、動植物由来の物質によっても類似の肺胞炎が起こることが知られはじめた。
現代では、同様のアレルギー性肺胞炎がエアコンや加湿器のカビによっても生じることが知られている。
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