「匂わない」は社会生活におけるマナーの1つにもなっています。化学物質に付与される3CASナンバーは、現在3億以上あるそうです。科学の発展とともに、今後も人工的な化学物質の数は増え続けるでしょう。人間の英知の結晶ともいえます。
ただ、アレルギーの発症や、その原因の1つとされる私たちのお腹の中の腸内細菌叢の減少、皮膚などの上皮のダメージという観点からみると、いいことばかりでもないようで、今後精査していく必要があると思います。都会に生活する西洋人の腸内細菌叢の多様性は、原始的な生活をする先住民のそれと比較して約20%減少していたそうです。
本書にもアレルギーは人類が工夫すればするほど増える、今や避けられない病気の1つであると書かれています。私も同じ認識です。
アレルギーは贅沢病か?
本書を読んでいて興味深かったのは、アメリカにおいて食物アレルギーは、「高所得者に多い疾患」と以前はされていたが、現在では、低所得層においても時に重要な疾患になってきたという事実です。診断や治療、管理にコストがかかるというのも1つの理由かと思いますが、低所得者は食べるものを自由に選べないという事情もあるそうです。
寄付された食品を配給するフードバンクに、食物アレルギーのケアが行き届かず、不慮の事故が起こるリスクが高いとのことです。アレルギー対策には日々コストやケアがかかります。これだけ患者数が増えてくると、さまざまな社会問題とアレルギーは切り離して考えることはできないという事実は、私には目からうろこの知見でした。
アメリカは、日本と違い貧富の差が大きい国です。近年大都市に行くと、ホームレスをたくさん見かけます。シリコンバレーのように、高給取りの人たちで栄えている地域もありますが、物価は上がり、家賃を払えずホームレスにならざるを得ない状況があるのかもしれません。
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