事前の予想では、ジェブ・ブッシュ元知事(フロリダ州)が優勢と見られていた。お父さんもお兄さんも大統領経験者、というコネを活かして盛大に資金を集めている。「またもブッシュ家とクリントン家の戦いか」などという声もあった。
トランプ氏は怒れる有権者の気分を「掘り当てた」
ところが現時点で世論調査を行うと、先頭を行くのは不動産王のドナルド・トランプ氏だ。
さらに2番手はゴッドハンド外科医のベン・カーソン氏、加えて元ヒューレットパッカード社CEOのカーリー・フィオリーナ氏が急上昇。政治経験がないアウトサイダー候補が好位置につけていて、これではプロ政治家たちは立つ瀬がない。逆に言えば、有権者の間ではそれくらいプロ政治家の値打ちが下がっているということであろう。
トランプ氏は毀誉褒貶の激しい人物である。結婚は3回、破産も4回ある。最近は不動産王というよりも、視聴者参加型の人気テレビ番組『ジ・アプレンティス』の司会者兼プロデューサーとして知られている。経営者兼芸能人といったところか。おかげで移民排斥や女性蔑視など、失言、暴言、放言を繰り返しつつも致命傷になっていない。
キャラが立った候補者が先陣を切っているおかげで、共和党の候補者選びは大いに注目を集めている。「悪名は無名に勝る」を地で行くような話だが、その間にもトランプ候補の暴言が止まらない。
下手をすると、ヒスパニック層や女性が共和党を見限ってしまうかもしれない。「白人男性ばかりの党」になってしまうのは、アメリカの人口動態から考えるととっても不利なこと。さらにトランプ氏に対しては、「最高司令官にふさわしいか」「核ミサイルのボタンを預けて大丈夫か」といった厳しい声も飛び始めている。
とはいえ、2016年選挙の序盤戦を盛り上げてくれたことはトランプ旋風の功績である。それ以上に、今の米国における「怒れる有権者」の気分を掘り当てた意義は小さくない。
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