景気指標から言えば、「米国経済は好調だ」ということになっている。エコノミストとしてはそう言わざるを得ない。しかるに、普通のアメリカ国民が好況に満足しているかといえば、けっしてそんなことはない。企業業績が好調であっても、失業率が5.1%まで下がっていても、景気信頼度は低く、ワシントン政治に対する信認は地に堕ちている。
「美辞麗句だけのオバマ時代」への反動か
だからこそ、「この国は日に日に偉大でなくなりつつある」「中国の指導者は、われわれの指導者よりも賢い」といったトランプ氏の呼びかけが腹に落ちて響くのであろう。
もうひとつ、「政治家の言葉」に対する信頼が極端に低下していることも浮かび上がってきた。普通の政治家が問題発言をすれば、非難を受けて支持率は下落する。しかし暴言が売りのテレビ司会者が口にすれば、いくらマスコミが叩いてもほとんど効果がない。むしろ「ホンネで語ってくれる正直な人」という好印象になる。
ことによると米国政治には、オバマ大統領という見た目がカッコよく、言葉が巧みで、けっして失言しない大統領の時代が6年半も続いたことへの反動が生じているのかもしれない。プロ政治家の美辞麗句に信用がおけなくなり、有名人のぶっちゃけトークに人気が出ているようなのである。
最後に共和党の候補者選びをまたまた競馬にたとえてみよう。トランプ氏はツボにはまればぶっちぎりだが、走るか走らないかは当日にならないと分からない曲者、ゴールドシップ。
エスタブリッシュメント系の候補者では、ジェブ・ブッシュ候補は現役最強馬と言われつつ、最近はご無沙汰気味のキズナ。若さが魅力のマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)はダービー馬のドゥラメンテ。リベラル州で実績を上げているスコット・ウォーカー知事(ウィスコンシン州)は、エピファネイアといったところか。穴馬としては、ジョン・ケイシック知事(オハイオ州)を挙げておこう。演歌が似合いそうなお人柄なので、キタサンブラックということでどうか。
さあ、女傑ジェンティルドンナ(民主党・ヒラリー上院議員)への挑戦権を得るのはどの馬か。当面の見どころは、暴走気味のゴールドシップがどこで息切れするか。そのチャンスを活かすのはどの馬か。混戦の面白いレースが期待できそうだ。
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