韓国大統領「戒厳令」暴走には経済問題があった! 騒動の背後でうごめく経済分野の「韓国病」とは

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若者の失望がさらに深まる中、尹錫悦大統領が強行した医科大学の定員拡大することで医師不足を解消しようという改革は、もともと保守派寄りだったエリート層をも敵に回す結果となった。

韓国ドラマ『SKY Castle〜上流階級の妻たち〜』では、同じコミュニティに住む上流階級の主婦たちが、子どもをトップ大学に進学させ、階級の再生産を果たすことを人生の最大の目標として描かれている。

医療改革によるエリート層の反乱

このピラミッドの頂点に位置する世界では、セレブ妻たちはソウル大学医学部合格者の学習記録を得るために宴会を開くこともいとわない。そして銀行は名門大学合格を保証する学習指導員の紹介を重要顧客の囲い込み手段として活用するのだった。

韓国国民はかねてより、国内の先進的な医療水準に誇りを感じていた。韓国の男女の平均寿命は2023年で83.3歳と、台湾の80.23歳を大きく上回っている(日本は84.3歳)。

しかし、韓国の医科大学の年間定員は約3000人に過ぎず、人口1000人当たりの医師数は2.6人と、経済協力開発機構(OECD)の平均3.5人を大きく下回っている(台湾は2.6人、日本は2.4人)。そのため医療現場や地方における医師不足は、避けられない喫緊の課題となっていた。

このため、尹錫悦政権の保健福祉部は2024年2月、毎年の医科大学の学生定員を2000人増加させると発表した。この政策は当初、多くの国民から支持を得たものの、狭き門を突破した医療界のエリート層はこれに反発。同年2月末から約1万人の勤務医と研修医がストライキを開始した。

政府はその後、定員増を約1500人に縮小すると発表したが、事態が収束することはなかった。

医師不足で患者の診療待ち時間が長引く中、市民の不満も徐々に高まっていった。2024年の中秋節(9月17日)連休には、保守的とされる『朝鮮日報』でさえ、社説で医療改革の過激さを批判した。

「理由はどうあれ、国民に『病気になったらどうすればいいのか』と思わせるようでは、まともな政府ではない」

実際、医科大学の定員拡大は、保守派の尹錫悦大統領と野党間で数少ない共通認識を持っていた。それ以外では、経済、外交、労働権益などの課題で両陣営の対立は激しい。

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