国家を束ねる「正統性」を失った各国指導者たち 4分の1が過ぎる21世紀、国家を束ねる指導者が消えた

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ナセル本人は独裁者で残酷な人物であったとしても、ナセルという名前でアラブ世界が一時的にも統一できたのは、この正統性にあったというのだ。

レーニンや毛沢東、ケネディやオバマなど、ある種カリスマ的な力をもつ政治家は、民族を1つにする希望というものを体現しているともいえる。

しかし、ナセルはアラブ世界を統合することができず、結局第2のナセルとなるサダトやイラクのフセインなど現れては消えていった。

イスラム原理主義というイデオロギーが出現しても、結局再び宗教間の対立と分裂によって、混乱が生まれ、今もその混乱の最中にあるという。

正統性を失った世界の指導者たち

これはアラブ世界の話だが、今世界が第4の段階、すなわち混乱期にあるとすれば、その混乱を止めるべき正統性をもった人物あるいは国が登場するしかないことになる。

それが誰であり、どこの国であるのかはわからないが、ここ数年世界を混乱に陥れている戦争を考えても、現存の政治家が正統性をもって人々を束ねることができていないことも事実である。

ロシアのプーチン、中国の習近平、イスラエルのネタニヤフ、アメリカのトランプ、ウクライナのゼレンスキーなど、いずれも正当な手続きで選ばれた政治家だとしても、信頼される正統性をもった政治家であるとはいえないからである。

アメリカは戦後、政治力、経済力、軍事力で正統な世界の指導者であったが、その衰えとともに正統な指導者たりえなくなった。

今後世界は西欧の衰退とともに、混迷の世界に進むだろう。それは歴史の転機となる価値規範の転換の時代となるかもしれない。今後われわれはそれに立ち向かい、サバイブしていくしかないのだ。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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