「えぐい」「やばい」「すごい」に見る言葉の"世代交代" 全部ほぼ同じ意味だが"発展段階"が異なる!

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

三女:うちは若干引くくらいの神業とか見せられると「えぐい」って感じる。

:たとえば?

三女:大谷翔平の活躍ぶり!

:確かにえぐい……。

「えぐい」とは

「えぐい」という語は、山菜などを食べたときの独特の苦みのことを指す言葉です。あくが強く、口のなかに不快感がまとわりついて消えない感じです。

「えぐい」は、もともとよい意味ではなかったはずですが、そのインパクトの強さから現在では「ありえないほどすごい」という意味で使われ、「やばい」のインパクトが薄まるなかで「やばい」に取って代わりつつあります。

『言語学者も知らない謎な日本語: 研究者の父、大学生の娘に若者言葉を学ぶ』書影
『言語学者も知らない謎な日本語: 研究者の父、大学生の娘に若者言葉を学ぶ』(教育評論社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

強調を表す形容詞の用法は世代とともに変遷します。ぞっとするという意味だった「すごい」、危機的な状況にあることを表す「やばい」、強い不快感を表す「えぐい」、いずれも否定的な意味から始まります(第1期)、それが肯定的な意味に拡張を起こし、程度の甚だしいレアなケースにたいし、強いインパクトを表すようになります(第2期)。

「えぐい」はその時期に達しているように思われます。そして、インパクトがあれば、どのような事象でも、適用できるようになります(第3期)。これが「やばい」の段階です。

そして、意味の希薄化を起こし、世代を越えて安定的に使われる段階に達します(第4期)。「すごい」はこの段階に達していると言えそうです。その後は安定した使用が続くかもしれませんし、他の形容詞の台頭による衰退や消滅が待ち受けている可能性もありそうです。

石黒 圭 国立国語研究所教授、総合研究大学院大学教授、一橋大学大学院言語社会研究科連携教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いしぐろ けい / Kei Ishiguro

1969年大阪府生まれ。神奈川県出身。一橋大学社会学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文章論。1999年に一橋大学留学生センター専任講師、2004年に同助(准)教授、2013年に一橋大学国際教育センター・言語社会研究科教授を経て現職。
 主な著書に『コミュ力は「副詞」で決まる』『文章は接続詞で決まる』『語彙力を鍛える』(以上、光文社新書)、『この1冊できちんと書ける! 論文・レポートの基本』(日本実業出版社)、『よくわかる文章表現の技術Ⅰ~Ⅴ』(明治書院)、『文系研究者になる』(研究社)、『ていねいな文章大全―日本語の「伝わらない」を解決する108のヒント』(ダイヤモンド社)、などがある。

この著者の記事一覧はこちら
石黒 愛
いしぐろ あい / Ai Ishiguro

首都圏にある某大学文系学部に通う大学2年生。石黒家の三姉妹の長女。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事