斎藤知事「告発文書」への対応はやはり問題だ 「パワハラ確認できず」の結論で収束じゃない
県民局長は4月4日、今度は県の公益通報窓口に通報することになる。この県民局長への処分は通報の調査結果が出るまで待ってはどうかとの進言があったものの、斎藤知事は5月7日に停職3カ月の懲戒処分にすると発表した。県民局長は7月に亡くなっている。自死と見られている。
3~5月にかけて、同法で禁じられている懲戒処分など「不利益な取扱い」やパソコン押収などの「通報者の探索」を県は実施した。その前提は、斎藤知事や片山氏が「公益通報とはいえない」と判断したからだ。
「不正の目的」だったのかどうか
9月6日、告発内容の真偽を調査する県議会の調査特別委員会(百条委員会)の聴取に応じた片山氏が、当時を振り返って何度も繰り返した言葉がある。それが「不正の目的」だ。
県民局長のメールやパソコン調査から、「クーデターを起こす」とか、「革命」などの文言が見つかったとし、これらは斎藤県政を転覆させる「不正な目的」で、同法の保護対象とはならないと主張した。
通報の濫用を防ぐために設けられた同法2条では、通報が「不正の目的」であるための要件について、「不正の利益を得る目的」「他人に損害を加える目的」などと定める。だが、文言が抽象的で解釈に幅がある。
法を所管する消費者庁参事官(公益通報・協働担当)室に尋ねると、「個別の案件には答えられない」とし、「不正の目的とは、公序良俗に反しない目的」としか説明してくれない。あいまいさは払拭されない。
おりしも今年5月に、消費者庁が法改正を目指すために設置した有識者検討会「公益通報者保護制度検討会」で議論が始まっている。第2回会議に事務局から提出されたのが、「公益通報者保護制度に関する近時の裁判例」と題する過去の判例だ。
ある宗教法人の不動産が不当に安く売却されたとして理事らに通報した2人の幹部職員が、懲戒解雇や降格、減給処分を受けた。宗教法人側は、告発した幹部職員が多数派を形成して人事を一新することをもくろんだ「不正な目的」の通報だと主張した。
だが、裁判所は、通報内容には真実と信じるに足りる相当の理由があり、人心一新することで是正しようとしたことは、「不正な目的とはいえない」として幹部職員の懲戒処分を無効と判断している。
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