吉野家が「客の求めない商品」を販売した理由

河村社長に聞く、値上げ後の客数回復への道

――どのように客数増を図っていくのか。

かつては、当社の原点であり、強みでもある、「うまい、やすい、はやい」を徹底的に磨き込めば、お客さんが支持してくれた時代もあった。今はそれだけでは難しい。失敗してもいいから、いろんなことに挑戦しなくてはならない。

なぜ「ベジ丼」を売り出したのか

ベジ丼は河村社長の指示で開発されたという(撮影:今井康一)

――そうした中、5月には「ベジ丼」という新しい商品を投入した。

ベジ丼は、私が直接指示をして開発・商品化したもので、昨年5~6月ごろから導入に向けて動き始めた。投入した最大の要因は「僕が食べたかったから」。

吉野家の客層は私と同じような40代の男性が多い。こうした年代の方は「野菜を食べなくては」という意識を持ち始めるからだ。

私はトップ以外が商品開発に口を出すべきではないと考えている。たくさんの意見を取り入れてしまうと、“両論併記”したような平均的な商品しか出てこない。仮に多くの意見を取り入れてしまえば、「牛すき鍋膳」やベジ丼なんて商品は世に出なかったかもしれない。

こちらが「ベジ丼」(撮影:梅谷秀司)

発売前には社内に対して「(ベジ丼は)売れないかもしれないけど、やる」と話したこともあった。販売食数より、吉野家がこれから“健康”に取り組んでいくご挨拶代わりの商品ということをアピールしたい側面が大きかった。

店舗にとっては、売れない商品が出るのは本当に迷惑な話。安部修仁・吉野家ホールディングス会長も「自分ならこんな商品はやらない」と言っていたが(笑)、ふたを開けてみると想定どおりに売れたので安心した。

――吉野家の常連客からは、ベジ丼に対して不満の声も挙がったのでは?

正直な話、「そんなの、吉野家に求めていない」という声も耳に入ってきた。でも、だからこそやる意味がある。ベジ丼を支持してくれる方は、今まで吉野家を選択肢にしてこなかった方が多く、新規顧客の開拓につながった。

僕が「健康」と社内で言い出したとき、「健康=美味しくない」というイメージを持つ幹部はたくさんいた。でも、美味しくて健康だからこそ売れる。この両方を組み合わせることで、新しい価値を提供していきたい。

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