シリア政権崩壊からみえる旧オスマン領国の不幸 民主主義、国民国家という枠組みが崩れ始めた

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いずれにしろ、不幸なことは、オスマントルコの崩壊後にずたずたに切り裂かれ、いまだに安定した国民国家体制をつくれていない中東地域のことだ。また、それは中東地域に限らない。ウクライナ、バルカン半島、北アフリカを含めたかつてのオスマントルコ帝国領の悲劇は終わっていない。

西欧諸国が主張するように、帝国の後には国民国家が成立するのか、それとも帝国のような組織は残存するのか――。過酷だった100年の歴史をみても、それを断定できない。エルドアンのトルコも、オスマン帝国の野望を捨てているわけではない。

旧オスマントルコ地域に注目せよ

ナセルのエジプトが西欧とソ連が対立する狭間でアラブ同盟を画策したように、アラブ同盟という帝国が出現するのか。それともトルコが後始末をつけるのか。ペルシア帝国の末裔イランがこの地域に介入するのか、それともイスラエルとアメリカが中東をまとめるのか。

果てはロシアがウクライナ戦争の勝利を得て介入してくるのか。それは不明だが、2025年以降も、旧オスマントルコ地域から目を離せないことは確かである。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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